改訂新版 世界大百科事典 「パンクーク」の意味・わかりやすい解説
パンクーク
Panckoucke
北フランスのリール市に17世紀末から住みついた印刷業者の家系。アンドレ・ジョゼフAndré-Joséph(1703-53)は自らも筆をとるほどの人物で,一家を隆盛に導いた。息子たちの中では長男のシャルル・ジョゼフCharles-Joséph(1736-98)が大出版業者として知られる。パリで修業後,リールに帰郷,父の死後家業を継いだ。1764年からパリに住み,啓蒙哲学者たちの理想に共鳴してボルテール,ルソー,ビュフォンらと交わり,またルクレティウスやタッソを翻訳する。ディドロとダランベールの《百科全書》を刷新・拡大した主題別の《系統的百科全書》を企画,82年に刊行を開始するが,全200巻を超えるこの大事業は50年後娘の代に完成をみることになる。パンクークはまた幾多の定期刊行物を手がけたことでも知られている。《メルキュール》誌を買い取って売行きを大幅に伸ばす一方,大革命勃発の89年には《モニトゥール・ユニベルセル》紙を創刊した。同紙はのちにフランス官報となる。パンクークの刊行物には,ラ・アルプをはじめ当代一流の文人が大勢寄稿し,大革命前後のフランス社会に重要な言論の場を提供した。
執筆者:鷲見 洋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報