文人(読み)ブンジン

デジタル大辞泉 「文人」の意味・読み・例文・類語

ぶん‐じん【文人】

詩文・書画など、風雅の道に心をよせている人。「文人趣味」
文事をもって仕える人。
「―武士国家の重んずる所」〈続紀・元正〉
律令制で、大学寮文章生もんじょうしょう
[類語]作家小説家文学者文士文豪文芸家随筆家評論家批評家エッセイスト

もん‐にん【文人】

作文さくもんの会で、詩文を作るために召された人。また、特に文章生もんじょうしょうをいう。
「はかせ、―等召して文つくらせ」〈宇津保・菊の宴〉

ふみ‐びと【文人】

文人ぶんじん」を訓読みにした語。
「天暦三年三月つごもりの日―召して」〈高光集・詞書

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精選版 日本国語大辞典 「文人」の意味・読み・例文・類語

ぶん‐じん【文人】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 文事をもって仕える人。
    1. [初出の実例]「又詔曰、文人武士、国家所重」(出典:続日本紀‐養老五年(721)正月甲戌)
  3. 詩文・書画など、文雅の道に携わる人。
    1. [初出の実例]「賦葉落庭柯空〈略〉于時諸文人相招、飲于紀学士文亭」(出典:菅家文草(900頃)五)
    2. 「文人詩を奉り、伶人楽を奏して」(出典:平家物語(13C前)一)
    3. [その他の文献]〔魏文帝‐典論論文〕
  4. 大学寮の文章生(もんじょうしょう)
    1. [初出の実例]「公年三十、始補文人」(出典:本朝文粋(1060頃)八・沙門敬公集序〈源順〉)

もん‐にん【文人】

  1. 〘 名詞 〙 作文(さくもん)の会で、詩文を作るために召されている人。また特に、釈奠(せきてん)に文人として出席する資格のある大学寮の学生(がくしょう)
    1. [初出の実例]「文人に難き題いだされたり。給はりて、文作りはてて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上下)

ふみ‐びと【文人】

  1. 〘 名詞 〙 「文人(ぶんじん)」の訓読み。

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改訂新版 世界大百科事典 「文人」の意味・わかりやすい解説

文人 (ぶんじん)

中国において文人の語は《詩経》など先秦の古典にすでに見えるが,それらは文徳ある祖先の意で,後世の語義に直接にはつながらない。文章の作者の意味に文人の語を用いるのは後漢時代ごろ,宮廷文学者とは異なる自覚を持った作者の出現を背景とする。近世社会の中では,文学だけに限らず,ひろく詩文書画の実作者としての文人たちが士大夫層の文化の代表者の一つとして時代をこえて存在する(琴棋書画)。彼らは単なる技術者ではないことを誇りとするが,同時にそれゆえにその実作は趣味的芸術として一定の限界をもつものであった。
執筆者:

江戸中期,享保(1716-36)ごろから存在が顕著になる,ある傾向を帯びた知識人を称した。享保ごろには近世社会もすでに100年をこえ,天下太平の中で教育・文化が普及して知識人層が増大した。その一方で,身分制度の固定化,社会全般の停滞という現象もあらわになり,知識人たちの間には身につけた学問・教養を現実社会に生かすことができないという不満や挫折感が広まった。そこから,現実への関心を切り捨てて,芸術や趣味の世界に自己の才能を生かそうという生活意識が生まれる。そうした生活意識を抱く知識人が文人である。彼らが好んだ芸術・趣味は必然的に知識性の強い高踏的なものであり,具体的には漢詩文,書道,南画(文人画),篆刻(てんこく),煎茶などであった。こういう生活意識はいつの時代にもありうるが,江戸中期のそれは時代の文化の中で大きな役割を果たし,たとえば池大雅の文人画のようなすぐれた芸術を生み出した。おりしも享保期には儒学界に荻生徂徠が登場して,朱子学の道学主義を否定する新しい儒学説(徂徠学)を唱えた。徂徠学には,個性の伸張を肯定し,漢詩文の制作を奨励する主張が含まれていて,これが文人たちの活動に理論的根拠を提供したので,文人意識は徂徠の門流を中心に普及した。初期の文人としては,徂徠門下の漢詩人服部南郭,大和郡山藩の家老で趣味人として聞こえた柳沢淇園(きえん),紀州藩儒で漢詩と文人画をよくした祇園南海などが有名である。明和・安永(1764-81)ごろになると,現実を離れて芸術・趣味に遊ぶことをよしとする意識は,漢詩文,文人画などにたずさわる人々をこえてより広い層に行きわたり,蕪村上田秋成などにも文人的な面影が認められる。また平賀源内大田南畝など知識人出身の初期戯作者の,高い教養を身につけていながらことさら卑俗な文芸をもてあそぶという生き方も,文人意識の屈折した現れと見ることができる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

普及版 字通 「文人」の読み・字形・画数・意味

【文人】ぶんじん

文徳ある人。また、文士。魏・文帝〔典論、論文〕夫(そ)れ人の相ひ輕んずるは、古よりして然り。傅毅(ふき)の班固に於ける、伯仲ののみ。而るに固、之れを小とす。

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