日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒメダニ」の意味・わかりやすい解説
ヒメダニ
ひめだに / 姫蜱
soft tick
節足動物門クモ形綱ダニ目ヒメダニ科Argasidaeの大形ダニ類の総称。分類学上マダニ科およびほかの特殊な1科とともにマダニ亜目を構成する。一般にマダニ科のものより大きく、体表は軟らかくて細かい凹凸に富み、背甲板をもたない。口は腹面にあって背側から見えず、雌雄の区別は困難である。鳥類と哺乳(ほにゅう)類のコウモリの寄生者で、世界に広く分布するニワトリヒメダニは、ニワトリのスピロヘータ症を媒介し、アフリカではヒトや家畜を襲い、回帰熱を媒介するものがある。日本ではイワツバメとコシアカツバメに寄生するツバメヒメダニ、コウモリ類に寄生するコウモリマルヒメダニが、ときに人家に侵入して就寝中のヒトを吸血することがあるほか、海鳥に寄生するクチビルカズキダニと、その近縁種の計4種が知られている。
[山口 昇]