日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビューイック」の意味・わかりやすい解説
ビューイック
びゅーいっく
Thomas Bewick
(1753―1828)
イギリスの木版画家。ニューカッスル近郊のチェリーバーンに生まれ、彫版師ベイルビーRalph Beilby(1744―1817)の下で修業を積む。『四足獣大観』(1790)と『英国鳥類図譜』2巻(1797、1804)の挿絵が彼の名声を決定づけた。正確な観察に基づく細密な鳥獣の描写も注目すべきものがあるが、その背景やテールピース(章末飾り)にみられる自然や農村生活の描写は生命感にあふれた素朴な味わいに満ち、20世紀に入って興味をひいた。彼が改良・普及した木口(こぐち)木版の技法は、銅版画にも劣らぬ精緻(せいち)な描写を可能にし、衰退に瀕(ひん)していた木版画に活路を与えた。また凸版であることから本文と挿絵とを一度の手間で刷ることができ、1840年以降の挿絵入り新聞、雑誌、書物の爆発的な隆盛を生む基礎をつくった。
[谷田博行 2015年12月14日]