日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビルターネン」の意味・わかりやすい解説
ビルターネン
びるたーねん
Artturi Ilmari Virtanen
(1895―1973)
フィンランドの生化学者。人の栄養と農業に関する幅広い研究を行った。1931年フィンランド工科大学、1939年ヘルシンキ大学教授。1920年代の初めに、各種バクテリアの発酵とそれに影響を及ぼす因子を研究し、家畜の青物飼料がpH4以下では腐敗しないことをみいだした。これにより寒い冬の間、家畜を安い費用で養う道が開けた。また、貯蔵時のバターの変質は、pHを調節することで防止できることを明らかにした。後年、興味をしだいに酵素、窒素固定、窒素代謝、人と動物の栄養の問題へと広げていき、根粒菌の生物学的窒素固定の研究、窒素化合物の研究、植物中のアミノ基転移の研究を行った。農業化学と栄養化学における研究と発見、なかでも飼料の保存法の発見により1945年ノーベル化学賞を受賞した。
[石館三枝子]