日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピオレドール賞」の意味・わかりやすい解説
ピオレドール賞
ぴおれどーるしょう
Piolet d'Or
優れた登山家に贈られる国際的な賞。登山界のアカデミー賞ともよばれ、最高の栄誉とされる。ピオレドールは、フランス語で「金のピッケル」の意で、受賞者には金のピッケルが授与される。選考の対象となるのは、前年に行われたすべての登攀(とうはん)で、登山についての考え方や登山方法、アプローチや登攀ルートの革新性、技術レベルのほか、パートナー、ポーターなどの関係者や環境の尊重などといった、さまざまな観点から選考される。毎年数名または数チームが選ばれる。賞はフランスの山岳雑誌『モンターニュ』Montagnesおよび世界のトップクライマーの集まりであるグループ・ドゥ・オート・モンターニュGroupe de Haute Montagne(GHM)が主催し、1991年に創設された。候補者のノミネートや審査には、『モンターニュ』誌編集者や過去の受賞者などが参加している。近年は、最小限の人員や装備による新ルートの開拓が熱心に進められており、ピオレドール賞はそのような現代アルピニズムを評価するうえでも重要な基準となっている。
1992年の第1回受賞者は、カンチェンジュンガ(ヒマラヤ)南峰の南西稜(りょう)に新ルートを開拓したスロベニアのマルコ・プレゼリMarko Prezelj(1965― )とアンドレイ・シュトムフェリAndrej Štremfelj(1956― )。日本の登山家では、2008年にカメット南東壁(インド)を初登攀した谷口けい(1972―2015)と平出和也(ひらいでかずや)(1979―2024)のペアと、同年にカランカ北壁(インド)を初登攀した天野和明(あまのかずあき)(1977― )、一村文隆(いちむらふみたか)(1977―2018)、佐藤裕介(1979― )のグループが、初めて受賞した。2015年(平成27)に北海道・大雪(たいせつ)山系で滑落死した谷口けいは、女性として最初の受賞者であった。
[編集部 2016年10月19日]