登山用具の一つで,氷雪上の登降の際,バランスの支持,足場切り,滑落停止,確保などに用いる。アイスピッケルEispickelともいい,英語ではアイスアックスice axe,フランス語ではピオレpioletという。ニッケルクロム鋼や炭素鋼などの特殊鋼製の頭部はブレードとピックよりなり,これにシャフトと石突きがつく。ヨーロッパの山中ではつえと兼用して古くから用いられていたが,19世紀のアルプス登山の黄金時代から積極的に利用されるようになり,形状や性能も登攀用具としての性格を強くするなど変化してきた。現在では実用的な登攀用具として,シャフトも短く金属製となり,頭部には穴をあけたものが多く,これにカラビナを通して確保に用いたり,数本組み合わせて足場として利用したり,アイスバイルと併用してホールドに利用するなど,ピッケル技術も著しく発達してきた。日本には明治時代にイギリスの登山家たちによって紹介された。
執筆者:徳久 球雄
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英語はice axe。登山用具。氷雪上の斜面の登降の支点、足場切り、滑落防止、確保の支点に利用するつるはし状の用具。19世紀中ごろヨーロッパ・アルプスの登山黄金時代に使われ始め、最初は単なる鉄鉤(かぎ)のついた杖(つえ)状のものであったが、だんだんと発達し、頭部は鋭いピックとブレードをもつ形となり、第二次世界大戦後は、確保支点として頭部に穴をあけたものや、登攀(とうはん)用のアイスバイル(氷壁登攀用にピック部分がハンマーになったもの。アイスハンマーともいう)に類似したものが多くなり、シャフトも初めは木製であったが、現在はメタルや合成樹脂製が多く、シャフトや頭部の大きさや長さも変化し、比較的軽量で、シャフトも短いものが多くなった。ピッケル使用は十分に訓練を経てから行うことが必要で、夏季雪渓などでは未熟な登山者がピッケルで負傷する場合も多い。
[徳久球雄]
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