改訂新版 世界大百科事典 「フェルネル」の意味・わかりやすい解説
フェルネル
Jean François Fernel
生没年:1497?-1558
ルネサンス期のフランスを代表する医学者。パリに出て哲学,天文学,数学,のち医学を勉強した。結局は医学者として大成し,パリ大学教授となり,晩年はアンリ2世の侍医も務めた。天体・人間一如のルネサンス的理論を展開し,当時根強かった魔術,占星術,神秘思想に彼自身強く心をひかれたが,のちこれらから決別した。進歩思想の持主として敵も多かったが,ベサリウスの解剖学書(《人体の構造》1543)に少し先立つ彼の経験主義的な観察眼による解剖所見(《医学の自然的部分》1542)には斬新なものがみられる。例えば脊柱管の叙述がそれである。特に解剖学的な見地に立って内臓各部分の生理的機能を研究し,その機能欠如から顕在化する症候を調べた。しかし結局は,心臓の収縮と拡張,動脈・静脈の生理機能を求めながら毛細管の存在には気づかず,ガレノスの体液病理説を継承・補充するにとどまった。とはいえ,これらの補充が後の実験生理学への道を開くことになる。
執筆者:大槻 真一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報