改訂新版 世界大百科事典 「フサゴカイ」の意味・わかりやすい解説
フサゴカイ (房沙蚕)
多毛綱フサゴカイ目Terebellidaに属する環形動物の総称。頭端にある多数の糸状感触手が房状になっているところからこの名がある。海岸の転石の下や岩の割れ目などに潜っているが,深海の泥底にすむものもある。世界で約650種,日本には60種知られている。体長3~10cm,環節数100~250。体は頭部,胸部と腹部の3部分にわかれ,ほぼ円筒状で前部が肥厚し,後方になるにつれて細くなる。胸部は10~20剛毛節からなり,前方には糸状または樹枝状のえら(鰓)が2~3対ある。背足枝には針状剛毛,腹足枝には嘴状(しじよう)剛毛がある。腹部は多くの体節からなる。背足枝がなく,腹足枝のみで嘴状剛毛をもっている。薄い膜質の管の外側に貝殻片や砂粒をつけ,その中で生活するものが多い。
ニッポンフサゴカイThelepus setosusの管の中には多毛類の一種のナガウロコムシが共生している。チンチロフサゴカイLoimia medusaは福岡県や熊本県でドベムシとよび,釣餌虫に用いられる。またハナサキフサゴカイTerebella ehrenbergi,ツクシフサゴカイPista cristataなどもふつうに見られる。
→ゴカイ
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報