化学辞典 第2版 「フッ化リン」の解説
フッ化リン
フッカリン
phosphorus fluoride
リンのフッ化物の総称.次の3種類が知られている.【Ⅰ】三フッ化リン(phosphorus trifluoride):PF3(87.97).三塩化リンPCl3または赤リンとフッ化水素との反応でつくられる.室温では無色の気体.分子は三方すい型.P-F1.61 Å.∠F-P-F97.7°.融点-151.5 ℃,沸点-101 ℃.空気中で発煙は少なく,空気に触れても発火しない.水で加水分解してフッ化水素とホスホン酸を生じる.COに似たπ軌道受容性配位子で,遷移金属とCO錯体に似た錯体をつくり,ヘモグロビンとも結合するため,毒性が強い.[CAS 7783-55-3]【Ⅱ】五フッ化リン(phosphorus pentafluoride):PF5(125.97).五塩化リンPCl5とフッ化カルシウムCaF2とを300~400 ℃ で反応させてつくる.室温では無色の気体.分子は三方両すい型.P-F(赤道面)1.529 Å,(極方向)1.576 Å.融点-93.7 ℃,沸点-84.5 ℃.加水分解しやすい.過剰の水によりリン酸になる.ガラスを侵さない.PF3より強いルイス酸で,アミン,エーテル,有機塩基などと付加物をつくる.また,HFとの付加物のヘキサフルオロリン酸 HPF6は強酸である.イオン重合反応の触媒に用いられる.[CAS 7647-19-0]【Ⅲ】四フッ化二リン(diphosphorus tetrafluoride):P2F4(137.94).減圧下でPF2IとHgとの反応で得られる.室温で無色の気体.融点-86.5 ℃,沸点-6.2 ℃.分子はF2P-PF2.加水分解するとPHF2になる.[CAS 13824-74-3]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報