改訂新版 世界大百科事典 「フュッスリ」の意味・わかりやすい解説
フュッスリ
Johann Heinrich Füssli
生没年:1741-1825
画家。チューリヒ生れ。芸術活動のほとんどをイギリスで行い,英語名はヘンリー・フューズリHenry Fuseli。青年のころベルリン滞在中に駐独イギリス大使に画才を認められ,1764年以降ロンドンに住み,J.レーノルズに油彩画の本格的制作を勧められる。70-78年イタリアに滞在し,ミケランジェロの鬱屈した雰囲気の人物像や深い悲劇的感情表現に強烈な感銘を受ける。65年にJ.J.ウィンケルマンの《ギリシアの絵画と彫刻についての省察》を英訳し,99年にはローヤル・アカデミーの絵画教授,1804年には同院長に就任するなど,当時の新古典主義美術やアカデミズムにかかわりをもった。その反面,実際の作風は,友人でもあったブレークからの影響もあり,怪奇な幻想性に満ちた,ロマン主義の先駆と呼べるものである。主題はシェークスピア,ミルトン,ダンテらの作品による文学的なものが多い。また油彩よりも水彩,素描を得意とし,多くの作品が銅版画化されている。
執筆者:鈴木 杜幾子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報