水彩(読み)スイサイ(英語表記)watercolor
aquarelle[フランス]

デジタル大辞泉 「水彩」の意味・読み・例文・類語

すい‐さい【水彩】

水で溶いた絵の具で彩色すること。
水彩画」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「水彩」の意味・読み・例文・類語

すい‐さい【水彩】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 水で溶かして彩色すること。
  3. すいさいが(水彩画)」の略。
    1. [初出の実例]「画は水彩風に見面(みづら)好く塗って」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉後)

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改訂新版 世界大百科事典 「水彩」の意味・わかりやすい解説

水彩 (すいさい)
watercolor
aquarelle[フランス]

水絵(みずえ)とも呼ばれ,水溶性の顔料を使って描いた絵画をさす。アラビアゴムなどを混入して練り合わせた顔料を水で溶かして使うが,水溶性の顔料という点だけに注目すれば,古代エジプトのパピルスに描かれた絵,イランやインドのミニアチュール,あるいは日本画,中国画なども広義の水彩ということになる。しかし一般には西洋でとくに18世紀以降に発達した技法ないしジャンルをさす。筆を使い,有彩である点は油彩に似るが,水で溶かして紙に描くという軽便性はデッサン的な要素といえる。また,にじみ,ぼかしなど,他の技法にはない持味もあり,独立的なジャンルとして描く側にも鑑賞する側にも多くの愛好家をもっている。透明性も水彩の特色の一つと考えられているが,これに増粘剤(膠(にかわ))を混入すると不透明性が得られ,これをグアッシュと呼ぶ。またより重厚なマティエールを出すため,これに不透明な白色顔料(ボディbody)を加えることが多いので,不透明水彩をボディ・カラーと呼ぶこともある。また煤(すす)から作られるビスター,イカの墨から作るセピアで描いた単色画も水彩に近いものをもっている。

ヨーロッパにおける水彩の歴史は紙の普及とも関係があり,15~16世紀に始まり,18世紀後半から19世紀にかけてのイギリスで一つの頂点に達した。中世の写本画も水溶性の絵具で描かれているが,紙でなくベラムvellum(子牛皮紙)に描かれ,細密描写に重点をおくので一般の水彩とは区別される。また16世紀以降しばしば描かれた,手のひらにのる程度の小型肖像画(ミニアチュール,ポートレート)も一般に水彩を使っているが,やはりベラムまたは象牙板の上に描かれ,いわゆる水彩とは区別される。水彩は15~16世紀のフランス,イタリア,ネーデルラントの画家たちにも散発的には見られるが,水彩画の最初の巨匠と呼ぶべきはドイツのデューラーで,1494-95年のイタリア旅行の途上および帰国後に描かれた数々の水彩は,それ自体で独立的な価値をもった最初の作品群といえる。この中にはアルプスやニュルンベルク周辺の風景を描いたものも少なくなく,風景画のまだ確立されていなかった当時にあって貴重な作例となっている。17世紀に入るとルーベンス,ファン・デイクなどがとくに風景を主題とした水彩に新境地を開いたが,一方レンブラントは水彩には関心を示さなかった。しかし,しばしばペン・デッサンと併用した彼のビスターには水彩に近い新鮮でデリケートな味わいがある。同時代のフランスの風景画家クロード・ロランもしばしばビスターでスケッチしているが,これらは通常以上に薄めた顔料を用いて透明感を強調しており,その淡い独特の効果により〈淡彩wash,lavis(フランス語)〉と呼ばれ,この後も水彩の技法の一つとしてしばしば用いられている。

 18世紀のフランス・ロココの画家ではフラゴナールロベールなどがすぐれた水彩を残しているが,ワトー,ブーシェは水彩には手をそめなかった。ルイ16世時代(1774-92)に水彩はようやく独立のジャンルとして王立絵画・彫刻アカデミーでも認められたが,水彩の黄金時代を現出したのは,何よりも18世紀後半から19世紀にかけてのイギリスで,カズンズ父子,サンドビーPaul Sandby(1725か26-1809),T.ガーティンなど水彩の専門画家が輩出し,1804年にはロンドンに水彩画協会が設立されるなど,イギリスは一気にヨーロッパの水彩芸術の指導的立場に立った。彼らの作品の多くはいわゆる地誌的,名所絵的性格の強い風景であったが,コンスタブル,とりわけターナーが出るに及んで水彩は油彩とは別個の独立したジャンルとしてその頂点に達した。また詩人としても知られるW.ブレークは,油彩には無関心で,もっぱら水彩で幻想的なビジョンを描いた。このころになると,イギリスでのこうした隆盛に刺激されたかのように大陸でも大半の画家たちが水彩を手がけている。とくに重要な画家をあげれば,ドラクロア,ドーミエ,セザンヌ,ゴッホ,シニャック,モローなどがおり,20世紀にかけてはルオー,デュフィ,スゴンザック,クレー,ノルデ,またアメリカではホーマー,プレンダーガストMaurice Prendergast(1859-1924),マリンJohn Marin(1870-1953)などがあげられ,いずれも従来の伝統にとらわれない自由な様式,技法を見せている。

日本では《イラストレーテッド・ロンドン・ニューズ》の特派員として幕末に来日したイギリス人ワーグマンに学んだ高橋由一,五姓田(ごせだ)芳柳(1827-92),その次男の義松などが洋風水彩画の端緒を作り,浅井忠は油彩のほか水彩にもすぐれていた。また1907年には大下藤次郎,丸山晩霞(ばんか)(1867-1942)らの手で日本水彩画研究所が設立され,その後の水彩の普及,発展に大きく貢献した。
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百科事典マイペディア 「水彩」の意味・わかりやすい解説

水彩【すいさい】

水で溶かして用いる絵具で描いた絵。英語でwatercolor,フランス語でaquarelle。グアッシュテンペラなど不透明絵具を用いたものも含めるが,狭義には透明絵具を使ったものをさす。透明絵具は,顔料をアラビアゴム,水,グリセリンなどと練り合わせたもの。デューラーなどの例に見えるごとく,ルネサンスのころから旅行の際の写生や下絵のために描かれたが,完成した作品としての水彩画は18世紀末から19世紀初めの英国に始まり,コットマン,コンスタブルらによって確立した。日本では浅井忠石井柏亭三宅克己らに始まる。

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世界大百科事典(旧版)内の水彩の言及

【絵画】より

…油絵の登場以前は,卵黄,卵白,にかわなどを媒材としたテンペラが写本装飾や板絵などに広く用いられていた。水彩画は,油絵より手軽で簡便なため,風景のスケッチなどに広く用いられ,とくに18世紀以降,イギリス風景画で大きな役割を果たした。また水彩は,やはり水に溶いた不透明性の画材であるグアッシュとともに,デッサンの彩色にも用いられる。…

※「水彩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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