改訂新版 世界大百科事典 「フライト船」の意味・わかりやすい解説
フライト船 (フライトせん)
fluit
fluitschip[オランダ]
17~18世紀のオランダで盛んに建造された新型の船舶で,貨物積載能力にすぐれ,比較的少数の水夫で航行可能であったため,オランダの海運,貿易の発展に大きく寄与した。1595年ホールンHoornの造船家リオルネP.J.Liorneの設計により出現したとされるが,貿易の興隆期を迎えたオランダ商人・船主の大型船舶への要望と資本,造船技術の蓄積がリオルネの設計の背景にあったといえる。3本マストで,船幅に比して4倍(のちには6倍)の長さをもち,胴体は丸くふくらみ,デッキの面積は比較的狭く,速力と安定性があり,船倉は広い。フライト船の航行により,バルト海沿岸地域,ノルウェーから輸入する穀物,木材などかさばる商品の輸送コストが引き下げられた。バルト海,北海以外の地域への航行にも使用され,ことに東・西インド会社によって,より大型,堅牢なフライト船が建造され,江戸時代に平戸,長崎にも多数来航した。
執筆者:栗原 福也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報