精選版 日本国語大辞典 「木材」の意味・読み・例文・類語
き‐ざい【木材】
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樹木の形成層の活動によってできた二次木部が多量に蓄積したものをいい、単に「材」ともよぶ。樹木は幹、枝、根の各部に二次木部を蓄積するが、一般に木材というときは、切り倒された幹の部分をさすのが普通で、これを製材したものが「材木」である。
[鈴木三男]
形成層をもつ植物はすべて木材をつくりうるが、人間が材木として利用しうる量を蓄積する樹木は限られている。ツツジ、アジサイなどの低木性の樹木や、フジ、シラクチヅルなどのつる性樹木は特殊な用途以外ほとんど材木として利用されることはなく、材木の中心を占めるのは、スギ、ケヤキなどの高木性の樹木である。高木となる樹木は裸子植物の針葉樹類とイチョウ、そして被子植物双子葉類のいわゆる広葉樹である。針葉樹およびイチョウの材は針葉樹材とよばれ、後述のように仮道管が構成の大部分を占めることに起因する性質などによって、広葉樹材とは非常に異なっている。また、針葉樹材は一般に軽軟であるので「軟材」ともよばれる。日本での主要な針葉樹材は、スギ科のスギ、コウヤマキ、ヒノキ科のヒノキ、サワラ、アスナロ、マツ科のアカマツ、クロマツ、モミ、ツガ、カラマツ、イチイ科のイチイ、カヤなどである。また、日本に輸入されるものとしては、北アメリカからの米材(ベイツガ、ベイマツなど)、ロシアからの北洋材(トウヒ類、トドマツ類、ダフリアカラマツなど)、ニュージーランドからのラジアータマツなどがある。
一方、広葉樹がつくる広葉樹材は、植物の種類によってそれぞれ異なった組織構成をもっており、それに起因して実にさまざまな外観と性質を示す。バルサやキリなどのように針葉樹材より軟らかいものもあるが、一般に広葉樹材は「硬材」とよばれる。ケヤキ、ミズナラ、カンバ類などの日本の広葉樹は、ほとんどがなんらかの形で利用されている。また、東南アジアを中心とした地域から輸入されているラワンやチークといった南洋材の多くは広葉樹材である。なお、形成層によってつくられた二次木部ではないが、一次組織が繊維に富んでいる単子葉類も木材として扱われることがある。モウソウチク、マダケなどの竹(たけ)材、ココヤシなどのヤシ材がこの例で、通直性に富んだ性質を生かした利用が図られている。
針葉樹材、広葉樹材は、資源としてみたとき、世界中に均等に分布しているわけではない。世界の温帯域は古くから人類の活動の中心であったため、木材の蓄積はきわめて少なく、亜寒帯域と熱帯域が木材蓄積の中心となる。北半球の亜寒帯林は北欧、シベリア、アラスカ、カナダときわめて広く分布している。林を構成する樹種はトウヒ、モミ、カラマツ類などマツ科の針葉樹類が中心であり、蓄積されている木材の量も多い。しかし、亜寒帯林は極寒の地で長い年月をかけて成立した林であるため、一度伐採されると森林の回復はむずかしい。一方、熱帯域では熱帯降雨林とその周辺の地域の森林が中心となる。ここでも天然林の伐採による自然破壊が急速に進んでいるが、近年、ようやく植林などが行われるようになってきている。
[鈴木三男]
木材は、幹の長軸方向に細長い組織と、幹の中心から長軸に直角、つまり放射方向に細長い放射組織とから成り立っている。したがって、木材の構造は、幹を横断する横断面(木口(こぐち))、幹の中心を通り、それを縦断する放射断面(柾目(まさめ))、および年輪に接して幹を縦断する接線断面(板目(いため))で観察すれば理解しやすいし、これら三つの断面のそれぞれには、同じ樹種の材であっても、異なった性質が現れることもわかる。
木材は形成層の細胞分裂によって、年々、肥大成長していくが、1年間での増加分が年輪である。年輪は幹の横断面で同心円状をしており、年輪の数がその木の樹齢を表すことになる。年輪は、成長が活発な春の時期につくられた早材(そうざい)と、成長が低下する夏から秋の時期につくられた晩材(ばんざい)とからなる。早材は春材(しゅんざい/はるざい)ともいい、細胞が疎大なので目が粗く、軽軟となる。これに対し、晩材は夏材(かざい/なつざい)ともよばれ、細胞が小さいので目が詰んでおり、硬くて色調も濃く見えることが多い。
木材は細胞壁が厚く、じょうぶな細胞がきわめて多数集合しているため、高さ100メートルを超えるような巨大な樹体を支えることができる。また、木材は道管、仮道管によって根から枝や葉への水分の通路となっている。しかし、すべての部分が通路として働いているわけではなく、新しい二次木部が外側に順次付け加えられるのにしたがって、幹の中心から順次「心材化」が進む。心材化とは老廃物を木材部分に蓄積し、水分の通路である道管や仮道管がゴム状物質の充填(じゅうてん)やチロース(チローシス)の形成などによって閉塞(へいそく)され、すべての組織が死滅することである。心材化した部分は「心材」とよばれ、赤、黒、紫など樹種に特有の色をもっている。一方、周辺部にあって水分の通路として盛んに機能している部分を「辺材」とよぶ。辺材は一般に色が淡色なので「白太(しらた)」ともよばれる。心材化は、樹齢と通路として働く辺材の量に関しておこるため、直径の小さな木や、旺盛(おうせい)な成長を続けている木では心材がまだみられないのが普通である。
[鈴木三男]
木材を構成している細胞の大部分は、発生の過程で完成すると同時に細胞質を失った細胞(いわば死細胞)が占めている。このため、樹幹内で生きているのは放射組織、樹脂細胞、木部柔組織などをつくっている柔細胞であり、その量も少ない。これら少数の生きた細胞によって、死んだ組織である道管や仮道管の働きがコントロールされ、また、心材化などの現象が引き起こされると考えられる。こうしたさまざまな細胞で構成された材の構造の概略は次のようである。
(1)針葉樹材 ほとんどの針葉樹材の構造は比較的単純であるが、その理由は、針葉樹材の体積の実に90%以上が仮道管によって占められており、他は少量の放射組織、樹脂細胞などをもっているにすぎないためである。多くの針葉樹材の放射組織は単細胞幅であり、柔細胞だけからなるが、マツ科の多くは放射仮道管をあわせもっている。樹脂細胞は仮道管の間に散在するのが普通であるが、イチイやカヤなどではこれを欠いている。マツ科のマツ、トウヒ、カラマツ属などは、放射仮道管以外に軸方向の垂直樹脂道と、紡錘形をした放射組織の中に水平樹脂道をもち、他の針葉樹材と際だった違いをみせている。また、普段は樹脂道をもたないモミやメタセコイアが形成層に刺激を受けると、樹脂道をつくることが知られている。これを傷害樹脂道とよぶ。
(2)広葉樹材 広葉樹材の構成要素は数多くあるが、大きくは軸方向の要素と放射組織の二つに分けられる。軸方向の要素には、水分の通路となる道管と道管状仮道管、機械的支持機能をもつ繊維状仮道管と真正木繊維、生きた細胞からなる木部柔組織などがある。放射組織には、すべて同型の細胞からなるものと、異なる形をした細胞からなるものとがある。また、ラワン類やカクレミノなどでは、垂直や水平の細胞間道をもつものもある。さらに広葉樹材は、構成細胞の種類が多く、それぞれの形態的な変異も大きいため、実にさまざまな形状を示す。このうち、横断面で見た道管の配列が非常に特徴的であり、しばしば木材のよい識別点となる。ケヤキ、ミズナラ、シオジなどは大きな道管が年輪の初めに同心円状に並ぶので「環孔材」とよばれる。これに対して、ヤナギ、ブナ、カツラなどは年輪内全体に同じくらいの直径をもった道管が散在しているので「散孔材」とよばれる。このほか、アカガシなどのカシ類にみられる道管が放射方向に配列する「放射孔材」、ヒイラギなどにみられる道管の集合した部分が波状に配列する「紋様孔材」などがある。さらに、ヤマグルマなどのように道管をもたないものは、横断面で道管の孔(あな)が見えないため、「無孔材」とよばれる。
[鈴木三男]
国連食糧農業機関(FAO)の統計データベース「FAOSTAT」では、木材利用を産業的利用(建築用、紙・パルプ用、合板用)と、燃料用の薪炭的利用とに大きく区分して統計処理を行っている。2012年版の「FAOSTAT」によると、2010年の世界の木材生産量は34億0519万立方メートルで、内訳は産業用材の生産が15億3721万立方メートル、45%、薪炭用材の生産が18億6798万立方メートル、55%となっている。地域的には、ヨーロッパ、北アメリカなどでは産業用材の生産が8割から9割を占めるのに対して、アジア、アフリカ、中南米などでは逆に薪炭用材の生産が7割から9割を占めている。また、ヨーロッパは、地球温暖化対策が国際問題となってからは木材の燃料用利用を高めており、2000年から2010年にかけて薪炭用利用の比率を14%から23%に上げている。産業用利用の内訳は、北アメリカはパルプ利用が6割ときわめて高く、ヨーロッパは4割、アジアは3割弱となっている。
日本は、産業用の生産比率が98%にも及び、薪炭用の生産利用はわずか2%にしかすぎない。木炭の最盛時の生産量は1957年(昭和32)の217万トンであるが、その時点でも木材の薪炭用としての利用比率は29%にしかすぎなかった。日本の木材利用は、歴史的にも、また現状においても産業用利用が基本となっており、利用内容も建築用の利用が大宗をなしている。林野庁の各年の『木材需給表』をみても、1990年代までは建築用利用が産業用利用の7割から8割を占めてきた。2000年代になるとパルプ用利用が急増し、パルプ用利用が4割、建築用利用が6割となっている。
[山岸清隆]
日本は、東洋のなかでも歴史的に卓越した「木の文化」の伝統を築きあげてきた国である。青森県の三内丸山遺跡(さんないまるやまいせき)は、縄文時代中期の定住の始まる初期の遺跡とされるが、そこでは考古学調査によって長辺30メートル、短辺9メートルの大型竪穴(たてあな)住居や、直径1メートルのクリ材(ロシア産)を使用したモニュメント風の高層遺構が発掘され復元されている。稲作が定着する弥生時代中期の大阪府の池上曽根遺跡(いけがみそねいせき)では、床面積133平方メートルの大型高床式建物が復元されている。弥生時代後期の吉野ヶ里遺跡(よしのがりいせき)では、床面積170平方メートルの高床式建物とともに高さ12メートルの物見櫓(ものみやぐら)が復元されている。
大陸から仏教文化が伝来する奈良時代には、高さを競うように木造の巨大建造物が各地で建造された。奈良県の東大寺大仏殿は、奈良時代の752年(天平勝宝4)に9年の歳月を費やして建立された木造建造物であるが、創建時は正面87メートル、側面51メートル、高さ50メートルにも及ぶ世界最大クラスの木造建築物であった。出雲(いずも)大社は、平安時代の970年(天禄1)に編まれた『口遊(くちずさみ)』に東大寺大仏殿を高さでしのぐ高層建築物として記載されている。他に比類のない高層社殿が建設されていたのである。
ここに築かれた日本の「木の文化」は、武家時代には城下町や門前町の造成など、面の広がりをもった街並づくりに継承され創造的な発展が続けられてきた。
第二次世界大戦以降も、日本は「木の文化」を継承しているが、欧米化の影響もあってか、「木の文化」が量産時代に向かって様相を変える。国土交通省の『建築統計年報』に構造別の住宅着工戸数が記載され始めるのは1964年(昭和39)からであるが、その最初の時点の木造住宅着工戸数は59万戸であった。それからわずか6年後の1970年には同着工戸数が100万戸を超え、1970年代の10年間は100万戸前後の高い水準の着工が続いた。まさに1970年代は、戦後の「木の文化」を象徴する量産時代を体現した時代であった。しかし、1980年代以降になると、住宅着工量の落ち込みが続き、1990年(平成2)には73万戸、2000年(平成12)には56万戸、さらに2010年にはピーク時の半分以下の46万戸にまで減少した。また伝統工法の軸組工法住宅(柱建式住宅)の着工量も、減少する事態となっている。壁組工法の北米型ツーバイフォー工法住宅は1990年代前半に導入の行われた住宅であるが、このツーバイフォー工法住宅がそれ以降木造住宅市場においてシェアを伸ばし続けている。2010年時点では、木造住宅の年間着工量の2割をツーバイフォー工法住宅が占めるまでになっており、伝統工法住宅の着工量の後退が続く事態になっている。また、伝統工法住宅は、柱の細物化、和室の洋間化などで1戸当りの木材使用料を減少させている。3.3平方メートル(1坪)当りの木材使用量は1980年代の1.1立方メートルから2000年代には0.7立方メートルと4割近くも減少させている。第二次世界大戦後の量産型の「木の文化」は陰りをみせている。「木の文化」の伝統を引き継ぐためにも、これまでの歴史を振り返り、21世紀の「木の文化」を創造的につくりあげる時代に到来している。
建築用、パルプ用以外の木材の利用事例を列記しておこう。電柱、鉄道枕木(まくらぎ)、新幹線資材、リゾート客車の内装、貨物梱包(こんぽう)、造船材料、桟橋、箸(はし)、椀(わん)、鉢、まな板、樽(たる)、桶(おけ)、机、戸棚、家具、調度品、下駄(げた)、梯子(はしご)、曲物(まげもの)、盆・皿、木工品、漆器、スポーツ用具(バット・ラケット・ゴルフクラブヘッド等)、楽器(太鼓・管楽器、琴、バイオリン、ピアノ等)などである。
[山岸清隆]
木材需給とは、木材需要と木材供給をあわせた用語である。日本特有の用語であって、国連のFAO統計などには使用されていない。木材需給統計は、木材需給に対する木材供給の過不足や木材自給率の現況を把握するうえで欠かせないものである。林野庁の『木材需給表』と農林水産省の『木材需給報告書』は、木材需給の動向を用途別に掲載している。また、『林業統計要覧』ならびに『森林・林業白書』(『林業白書』)にも、木材需給の動向がコンパクトにまとめられて掲載されている。以下、これらの資料によって第二次世界大戦後の木材需給の動向をみていこう。
第二次世界大戦後の木材需給(薪炭原木、しいたけ原木を除く一般用材)は、三つの画期をもっている。まず第一の画期は、木材の供給不足から木材需給ギャップが発生する1950年から1960代初頭にかけての時期である。この時期は、木材需要が急増を続け、1950年に2675万立方メートルであった木材需要は、1961年には2倍強の6072万立方メートルにまで増大した。これに対して、木材供給は低位で推移し、1950年の2548万立方メートルは1961年に4933万立方メートルと2倍弱にとどまった(『林業統計要覧 累年版』1964年版)。そのため、需給ギャップが発生するとともに、ギャップの大きさが年々拡大した。1950年に5%にすぎなかった需給ギャップは、1961年には19%と、14ポイントも拡大した。政府は、この対策として1961年「木材価格安定緊急対策」を閣議決定し、丸太関税の全面撤廃などを柱とした木材の自由化政策を開始した。
第二の画期は、木材需給の不均衡を外材でまかなう政策が展開される1960年代から1990年代にかけての時期である。1961年に6157万立方メートルであった木材需要は、1970年に1億0268万立方メートルと1億立方メートル台に増大した。それ以降、木材需要は、1980年代前半(木材不況期)に多少の落ち込みをみせたものの、2000年に至るまでの30年近くにわたって1億立方メートル台の需要が継続した。この1億立方メートル台の木材需要を供給面で補完したのが外材であった。1960年に754万立方メートルにしかすぎなかった外材の輸入量は、1970年には5644万立方メートルと7倍強も増加し、1990年には10倍強の8179万立方メートルにまで増大し、そのまま1990年代いっぱい続いた。そのため、国産材の供給は年々後退し、1960年に87%であった木材自給率は1970年に45%、1990年には26%、2000年には18%と2割を切るまでに低落した。
第三の画期は、1億立方メートル台で推移した木材需要が減退に転じる2000年代の時期である。2000年に9900万立方メートルであった木材需要は、2012年には7000万立方メートルと3000万立方メートル近くも減少した。外材の供給量は、木材需要の動向とオーバーラップして減少した。外材の供給量は、2000年の8124万立方メートルが2010年には5202万立方メートルと、36%も減少した。国産材の供給量は、2000年の1800万立方メートルが2012年に1969万立方メートルとわずかに増加した状態で推移した。木材自給率は、外材供給量の3割近くの減少もあって2000年の18%が2012年には28%にまで上昇した。
参考までに2000年と2012年時点の用途別の木材自給率を掲げると、製材用木材自給率(31%、44%)、パルプ・チップ用木材自給率(11%、17%)、合板用木材自給率(1%、25%)となっている。
[山岸清隆]
世界の木材貿易は、生産から振り向けられる規模が小さく、輸出入も特定地域に集中している。FAO「FAOSTAT」のデータによると、2010年における世界の木材生産量は34億0519万立方メートル、そのうち輸出に振り向けられる木材は1億0090万立方メートルで、わずか4%にしかすぎない。4%という輸出比率は、わずかな気候変動や自然災害の影響の受けやすい不安定な規模である。地域別の木材輸出入動向は、産業用材では輸出量が1億1153万立方メートル、その48%がアジア向け、45%がヨーロッパ向けとなっており、この2地域だけで産業用材貿易の93%を占める状況となっている。薪炭用材の輸出量は輸出量全体の5%と少なく、その89%がヨーロッパ向けとなっている。
日本の木材輸出は、2010年時点で国内の木材生産量の0.8%ときわめて少ない。スギ間伐材などが中国、韓国に輸出されているが、材種的に輸入国の生活習慣に入り込めないなどの問題を抱えている。他方、日本の木材輸入は、5大陸、80か国を対象にグローバルに展開されている。『木材需給表』(2011年版)によると、木材輸入量は、最盛時の1996年には8900万立方メートル(国内消費量の80%)にも及んでいた。それ以降は減少に転じ、2010年時点の輸入量は5200万立方メートルと、最盛時の4割減となっている。この日本の輸入量は、同年の世界の産業用木材の輸出量の45%を占める規模である。輸入量の地域別比率は、北アメリカからが26%、オセアニアからが20%、アフリカなどからが15%、東南アジアからが12%、ヨーロッパからが10%、ロシアからが5%などとなっている。木材輸入が急増した1990年代前半までは、輸入先が北アメリカ、東南アジア、ロシアの3地域に集中しており、これら3地域からの輸入が1995年時点で7割近くを占めていた。それ以降、この3地域からの輸入が減少し、アフリカ、ヨーロッパなどからの輸入が増加する状況になっている。輸入形態も丸太輸入から製品輸入に大きく移行し、『森林・林業白書』(2014年度版)によると、2012年の加工品の輸入比率が輸入量全体の9割にも及ぶとされる。
[山岸清隆]
木材価格は、製材品価格、丸太価格、立木(りゅうぼく)価格の3段階の価格からなっている。製材品価格は、原木購入価格に製材加工費、流通経費などを合算し、直近の需要動向を勘案して決められる。丸太価格も、立木購入費に丸太生産費、流通経費などを合算し、製材品価格と同様に直近の需要動向を勘案して決められる。これに対して、立木価格は、労働投下年月と樹木生育年月の差異が大きいため、価格の算定がむずかしい。苗木を立木に育て上げるには50年前後の年月を要するのに対し、労働を投下する期間は5年ないし長くても8年程度にしかすぎない。残りの40年ほどは、これといった労働を投下することもなく、樹木成長を自然力に依存する。この自然力に依存する期間を立木価格にどう組み込むかがむずかしく、合理的な価格算定方式をみいだせないできた。市場調査機能をもつ国有林では、原木市場の売買価格から丸太生産費ならびに運搬経費などを差し引いて立木価格を算定する、市場逆算方式を採用してきた。一般の山林所有者の多くは、造林費を元本とし、郵便定期預金の利子率で複利計算して立木価格を算定する方式も採用してきた。木材販売を「セリ」方式で行う原木市売市場が各地に開設されてからは、市日に公開される売買価格を参考に立木価格を算定する方式をとるようになっている。
第二次世界大戦後の木材価格の動向には、三つの画期がある。第一の画期は、木材価格が上昇を続けた1950年代から1960年代にかけての時期である。この時期の木材価格は、製材品価格、丸太価格、立木価格ともに上昇を続けたが、なかでも立木価格が独歩高(どっぽだか)といわれる高騰を呈した時期である。たとえば、スギ材の価格(立方メートル単価)は、1952年から1965年にかけて製材品価格は2.5倍、丸太価格は1.9倍の上昇であったのに対し、立木価格は3.6倍も上昇し、木材価格の上昇が立木価格の高騰に帰結する状況を呈したのである。
第二の画期は、外材輸入が拡大を続けるなかで国産材価格が横ばいに転じる1970年代から1980年代にかけての時期である。木材価格は、外材供給シェアの拡大ともに価格上昇が頭打ちとなり、独歩高を続けていた立木価格も1980年をピークに下落に転じた。これに対し、外材価格は、国産材価格の動向とは逆に上昇基調を続けた。スギ丸太価格とベイツガ丸太の価格差が1970年代に3割近くもあったものが、1980年代には1割前後にまで縮小した。
第三の画期は、外材が国産材の価格を上回る「価格の逆転」が発現し、両者の価格差が年々拡大する1990年代以降の時期である。「価格の逆転」は、1992年にベイツガ丸太がスギ丸太の価格を上回る形で発現し、それ以降8%にしかすぎなかった両者の価格差が年々広がり、2010年には価格差が2倍にも及ぶまでになっている。また、スギ製材品とベイツガ製材品も、1995年にベイツガ製材品価格が上回る形で「価格の逆転」が発現し、3%であった価格差が2005年には26%にも広がった。2006年以降、ベイツガ製材品の価格公開が行われないため、それ以降の価格差の検討ができない状況になっている。使用価値を同じくする商品は、市場の論理からいって、当初は価格差が生じていても、年月の経過とともに価格差が徐々に縮小する。しかし、国産材と外材は、その逆に価格差が年々拡大する異常な事態になっており、通常の市場論理では問えない状況になっている。
[山岸清隆]
『サー・G・テイラー他編、平井信二監修『大図説 世界の木材――木と人間の文化誌』(1979・小学館)』▽『満久崇麿著『木のはなし』(1983・思文閣出版)』▽『上村武著『木材の実際知識』第3版(1988・東洋経済新報社)』▽『国立民族博物館編『高きを求めた昔の日本人――巨大建造物をさぐる』(2001・山川出版社)』
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一般に,樹木の根,枝を除いた樹幹部の樹皮以外の部分をさし,樹心に近い部分の心材部と周辺の辺材部からなる.セルロース,ヘミセルロース,リグニンを主成分とし,副成分として樹脂,油脂,精油,タンニン,無機質などを含む.副成分の含有量およびその性状は,樹木の色調,香気,光沢,耐久性などの諸性質と密接に関連している.樹種分類からは,針葉樹材と広葉樹材に分けられる.世界的には赤道に近い地域には広葉樹の分布が多く,緯度が高い地域では針葉樹の分布が特徴的である.木材の材料としての長所は,比重の小さいわりに強度が大きく,吸湿性,加工性にすぐれ,熱伝導性が小さいことなどがあげられる.反面,可燃性であり,腐朽しやすく,含水量による寸法の変化が大きい.用途は,構造用材料(建築材,土木用材,まくら木など),装飾用材料(家具など),パルプ,紙,繊維材料,薪(しん)炭材料など広範囲にわたる.なお,早生樹材で短伐期で生産される木材は,パルプあるいはパーティクルボードなどの木質材料の製造におもに使用される.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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… 森林資源は人間生活には不可欠のものである。そのうち木材は太古より燃料として用いられているのみならず,生活用具,家屋などにも利用されている。近代になってからはとくに製紙用にも多量に利用されている。…
…木を素材とした彫刻,浮彫。木材は,石材,テラコッタ,ブロンズ(青銅)などとともにもっとも一般的な彫刻用素材であり,木材の産出する地域では手に入れやすいため,丸彫彫刻のみならず,建築,家具などの装飾や工芸品の素材としても多用された。ただ,木材は湿気や火に弱く,石材や金属などに比べて長期の保存に適さないという欠点をもっている。…
…
【造形植物】
直接,間接に人間の体内に摂取する形で利用する植物のほかに,人間の生活に必要な器物(住居,家具,運搬具,衣服,装飾品など),すなわち生活に必要な形あるものを作り出すのに利用される植物も,おびただしい数にのぼる。それは,植物には動物とは異なり,付加的生長の結果としてセルロースとリグニンを主成分とする硬い組織体である木材部分を形成するものが多いし,また木部繊維,靱皮繊維,あるいは種子の表面の毛など長い細胞によって作られる各種繊維を有するものも多く,それらを人間が多面的に利用しているからである。植物体に含有される樹液や乳液は,植物体が傷つき浸出したときに硬化し保護する働きをするものが多い。…
※「木材」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
少子化とは、出生率の低下に伴って、将来の人口が長期的に減少する現象をさす。日本の出生率は、第二次世界大戦後、継続的に低下し、すでに先進国のうちでも低い水準となっている。出生率の低下は、直接には人々の意...
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