改訂新版 世界大百科事典 「フリースピーチ運動」の意味・わかりやすい解説
フリースピーチ運動 (フリースピーチうんどう)
Free Speech Movement
1960年代後半におけるアメリカの学生反乱の口火を切った学生運動。1964年9月カリフォルニア大学バークリー校で,大学当局が学生の政治活動を規制する方針を告示したのに対し,学内の学生諸団体はこれに反対してゆるやかな連合を組みフリースピーチ・ムーブメント(FSM)を結成した。運動の過程で大学当局は無権利状態の学生に対して圧制者であることが暴露され,権利の獲得のために決定機関への学生参加を要求した学生たちは,〈知識工場と化した大学〉の〈人格性と感応性を欠いた官僚機構〉を鋭く追及した。さらに人道主義をかかげ,リベラルな価値を標榜する大学が,実はベトナム侵略戦争を支える軍部や大企業と癒着している事実が告発された。バークリーでの闘争は,同年12月大学本部に座り込んだ学生ら800人以上が逮捕されたのち,教授層の学生への歩み寄りによって収拾された。しかし,FSMは公民権運動などキャンパスの外での活動から学内へ視線を転じつつあった全米の学生運動〈スチューデント・パワー〉の組織モデルとなり,マリオ・サビオMario Savioらニュー・レフトの活動家が輩出した。
執筆者:今 防人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報