日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘダーヤト」の意味・わかりやすい解説
ヘダーヤト
へだーやと
ādeq Hedāyat
(1903―1951)
イランの作家。テヘランの名門に生まれる。フランス系学校で学んだのち、1926年から数年フランスに留学。帰国後創作活動に励み次々に力作を発表する。レザー・シャーの独裁体制強化に伴い創作の筆を折り、中世ペルシア語や民俗学の研究に走るが、41年以降創作活動を再開。結局はイラン社会に絶望しパリでガス自殺した。20世紀前期イラン最大の作家と評せられる。実存主義的傾向が強く、都市の下層社会の人々を主題として俗語を駆使した。カフカの強い影響を受けた『盲目の梟(ふくろう)』(1937)と独裁体制批判の『ハージー・アーガー』(1945)は長編の代表作。ほかに優れた短編小説集として、『生埋(いきう)め』(1930)、『三滴の血』(1932)、『明暗』(1933)、『野良(のら)犬』(1942)などがある。戯曲、古典文学の分野でも活躍、とくにウマル・アル・ハイヤーミー研究で注目すべき作品を執筆した。
[黒柳恒男]
『中村公則訳『盲目の梟』(1983・白水社)』