貧しさのために社会的地位もいちばん低い人たちをさす。その具体的な内容は国と時代とによって変わる。わが国についていえば、明治期には、浮浪者、日稼ぎ人、雑業とともに職工や小作人がおもな内容であった。その後、産業革命を経て機械制大工場が増えるにしたがい職工の数も増え、職工とその他の不安定就業層や脱落層(貧困高齢者、病弱者、法的救済対象者、反社会的集団など)との違いがはっきりして分化してくる。そのために下層社会は2通りの意味に使われるようになる。一つは、社会を上、中、下の3層に分けた場合で、近代の労働者階級をも含めた広い意味のものである。もう一つは、貧困層、極貧層、底辺層などと同じ意味に使われるもので、労働者階級でも安定就業層を除いた狭い意味のものである。世間一般では広い意味のものもかなり使われてきたが、社会問題研究では狭い意味の使い方が多くなっている。
この用語に、人間の優劣をも意味するような身分制的な残りかすも含まれていたことから、第二次世界大戦後はあまり使われなくなってきた。現在は、生活水準、消費水準の高い低いに限定した上、中、下のような使われ方が普通である。
[真田 是]
『横山源之助著『日本の下層社会』(岩波文庫)』▽『津田真澂著『日本の都市下層社会』(1972・ミネルヴァ書房)』
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