ヘラガタヤムシ(その他表記)Pterosagitta draco

改訂新版 世界大百科事典 「ヘラガタヤムシ」の意味・わかりやすい解説

ヘラガタヤムシ (篦形矢虫)
Pterosagitta draco

現生矢虫綱ヘラガタヤムシ科の毛顎動物。暖海域の表層でプランクトン生活をし,黒潮水塊の指標種になっている。1属1種。体長はほぼ10mm,体幅2mm,体は筋肉が発達していて硬く,不透明である。顎毛は7~11対で,顎毛の内側に鋸歯をもつことがある。泡状組織が非常に厚く,頸部(けいぶ)より貯精囊まで達しているため頸部ははっきりしない。また腹神経節の外側の泡状組織には触手束がみられる。感触器官といわれる繊毛環は長円形で頸部から始まり,頭部とほぼ同長である。側鰭(そくき)は1対で尾部横隔膜の直後から始まってほぼ半円形。全体が篦(へら)の形に似るというのでこの名がある。成熟した卵巣は頸部に達し,貯精囊は後鰭に接着する。尾節は体長の約40~50%を占める。
ヤムシ
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヘラガタヤムシ」の意味・わかりやすい解説

ヘラガタヤムシ
Pterosagitta draco

毛顎動物門ヤムシ綱無膜目ヘラガタヤムシ科。体長 1.2cm。体は幅広く,不透明で硬い。側方の鰭は尾部横隔膜の直後から始る。泡状組織 (体の表皮が肥厚したもの) がきわめてよく発達し,頸部から貯精嚢まで達する。暖海外洋性の表層プランクトンで,黒潮水系に比較的多い。

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世界大百科事典(旧版)内のヘラガタヤムシの言及

【ヤムシ(矢虫)】より

キタヤムシS.elegans(イラスト)は北海道やオホーツク海に広く分布し,親潮の指標種になっている。ヘラガタヤムシPterosagitta draco(イラスト)は体長の割合に幅が著しく広いのが特徴で,黒潮水塊の指標種になっている。イソヤムシSpadella cephalopteraは,特殊な性質をもち,内湾の浅い海底の石や海藻などに吸着突起で付着したり,表面をほふくして生活する。…

【毛顎動物】より

…世界で約110種,うち日本からは33種が知られている。キタヤムシ(イラスト),フクラヤムシ,ヤムシ,マントヤムシ,フトエリヤムシ,ヘラガタヤムシ(イラスト)などが日本近海に広く分布する。【今島 実】。…

【ヤムシ(矢虫)】より

キタヤムシS.elegans(イラスト)は北海道やオホーツク海に広く分布し,親潮の指標種になっている。ヘラガタヤムシPterosagitta draco(イラスト)は体長の割合に幅が著しく広いのが特徴で,黒潮水塊の指標種になっている。イソヤムシSpadella cephalopteraは,特殊な性質をもち,内湾の浅い海底の石や海藻などに吸着突起で付着したり,表面をほふくして生活する。…

※「ヘラガタヤムシ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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