改訂新版 世界大百科事典 「ヘーガーシュトレーム」の意味・わかりやすい解説
ヘーガーシュトレーム
Axel Hägerström
生没年:1868-1939
スウェーデンの哲学者。ウプサラ大学教授。彼はその認識論においてカントの主観主義を批判して形而上学を拒否し,その価値論において伝統的規範倫理学の学としての不可能を説きメタ倫理学の立場をとる。彼の形而上学否定の根拠は一つのものが二つの実在--時間空間の世界と形而上世界--に同時に属することの論理上の矛盾にある。たとえば神の存在の命題は,時空の世界に属さない一つの実体が時空の世界に存在するというのだから矛盾律に反する。この点,事実による検証不能のゆえに形而上学を否定する論理実証主義と論拠を異にする。また彼のメタ倫理学は倫理命題を単に情緒の表出,無意味と片付けるのではなく,ある行為にある属性が客観的に帰属するとされる心理的背景,歴史的起源を解明し,哲学上のウプサラ学派を築いた。またローマ法,19世紀法実証主義の批判的研究により北欧リアリズム法学の祖となる。主著は,《私の哲学上の立場》(1929),《法および道徳の探究》(1953),《ローマ法の義務概念》(第1巻1927,第2巻1941)。
執筆者:佐藤 節子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報