アインシュタインの特殊相対性理論によって初めて明らかにされた概念であり,空間座標xi(x1=x,x2=y,x3=z。x2は2番目のx座標という意味で,xの2乗ではない)と,第4番目の時間座標x0=ctとからなる四次元的空間のこと(cは光速度,tは時間)。時空間ともいう。アインシュタイン以前においては時間と空間はまったく別のものであった。例えば質点の運動は,その空間的な座標xiを時間tの関数としてxi(t)と与えることによって決定される。時間はあらゆる物理的記述に先立って与えられている絶対的なものであった。ところがアインシュタインの思考実験により,二つの事象の同時性は,座標系のとり方に依存する相対的なものであることがわかり,時間概念の絶対性は失われることになった。さらにその数学的発展であるローレンツ変換においては,空間座標と時間が互いに移り変わる。これは,時間も空間座標と対等な資格しかもたないことを意味する。
このような事情を数学的に明らかにするために,H.ミンコフスキーによってミンコフスキー空間(ミンコフスキー時空)というものが考えられた。これはふつうの三次元の空間のほかに,時間を第4番目の座標としてもつ四次元擬ユークリッド空間であり,これが時空のもっとも簡単な表現である。説明を簡単にするためにyとzを省略し,xとct(これをwと書く)からなる二次元のミンコフスキー時空を考えてみよう(図)。質点がある時刻にある場所にあるという事象は,この時空の中の1点で表され,世界点と呼ばれる。いろいろな時刻における世界点をつなげると世界線と呼ばれる直線,または曲線となり,これが質点の運動の過去から未来にわたる歴史を表している。
→相対性理論
執筆者:藤井 保憲
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時間と空間の統一体。ニュートンは、絶対時間と絶対空間の概念を導入した。絶対時間は、他の何物にも規制されず、それ自身、一様に流れる。絶対空間は、他の何物にも規制されず、それ自身、一様に不動に存在する。つまり、ニュートンの考えでは時間と空間は独立であり、かつ不動である。この考え方が19世紀までの基本的な考えであり、時空という概念はなかった。
アインシュタインは1905年に、光速はどんな観測者からみても一様である、物理学の基本方程式は等速直線運動をしているどんな観測者からみても同じである、という原理を基にして、特殊相対性理論を提唱した。すると、時間と空間は、もはや独立ではなく、ミンコフスキー時空という一様な四次元空間となる。運動している物差しの長さが縮んだり、時計が遅れたりする特殊相対論的効果は、時間と空間が互いにその一部を交換して生ずるのである。アインシュタインは、さらに進んで一般相対性理論を提唱した(1916)。そこではニュートンの万有引力の法則にかわって、重力を四次元時空のゆがみと考える。つまり、重力という「力」は存在せず、物体はゆがんだ時空の中の最短距離(測地線)を走る。一般相対論的時空は、もはや不動でも一様でもなく、物質の存在により規定され、動的で非一様なものである。
[松田卓也]
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(尾関章 朝日新聞記者 / 2007年)
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…この長さの縮みは,実は以前ローレンツが,マイケルソン=モーリーの実験を説明するために仮定したもの(ローレンツ収縮)と結果においてまったく同じものであるが,アインシュタインは新しい考え方に基づいて,これに自然な解釈を与えたものということができる。
[時空]
(3)式が示すように,ある座標系で時間と考えている量が,他の座標系でみると,時間と空間座標のまじり合ったものになるというのであるから,時間と空間の間にはもはや絶対的な区別はつけられない。むしろ両者を統一した時間・空間,または略して時空こそが物理的記述の枠組となるべきである。…
…これをローレンツ変換といい,注目すべきは,時間もtからt′へ変換され,とくに時間と空間座標の間に移り変りが起こることである。時間は,もはや空間座標と独立なものではなく,時間と空間を統合した時空という概念に達しなければならない。上記の式そのものは,光速度が方向によって変わらないことを示したマイケルソン=モーリーの実験に関連してH.A.ローレンツがすでに導いていたので,現在でもローレンツ変換と呼ばれているが,アインシュタインはローレンツとは異なるまったく新しい解釈を与えたのである。…
※「時空」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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