知恵蔵 「ベイマックス」の解説
ベイマックス
14歳の天才少年ヒロは幼い頃に両親を亡くし、兄タダシと暮らしていたが、謎の事故により兄は死んでしまう。そこに兄が開発した癒しロボット「ベイマックス」が現れ、交流が始まる。ベイマックスは風船のように膨らみ、白い巨体で苦しんでいる人々を包み込んで回復させてくれるケア・ロボットであり、ヒロはベイマックスの包容力によって兄の死のショックから立ち直る。元気になったヒロは兄の死に不可解な点があると気付き、ベイマックスと一緒に死の真相を追うというストーリー。
米国発のディズニーによる長編アニメーション映画だが、作品には随所に日本を意識した表現が見られる。舞台となっている「サンフランソウキョウ」は架空の都市という設定だが、漢字の看板、かわら屋根など、日本の風景が作品に取り入れられている。ベイマックスの頭部は原作では戦隊もののような印象だったが、映画では神社の拝殿に掲げられている大きな鈴をモチーフとする丸みを帯びた形になった。ストーリーもロボットが敵を倒す「ヒーローもの」から主人公とロボットの心の交流に主題を置く内容に変更した。少年を救うロボットという内容は、日本の人気マンガ『ドラえもん』にも通じる部分がある。日本は子どもだけでなく大人にもアニメ・マンガ文化が浸透しており、日本というマーケットをターゲットにした作品を作ったことがうかがえる。
興業通信社シネマランキングによると、14年2月2日までに映画「ベイマックス」の興行収入は5週連続で1位を獲得、累計動員は590万人、累計興収は75億円を突破した。第87回アカデミー賞長編アニメーション映画賞受賞。
(若林朋子 ライター/2015年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報