日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ペトルス・ウェネラビリス
ぺとるすうぇねらびりす
Petrus Venerabilis
(1092ころ―1156)
ベネディクト会のクリュニー修道院長。シトー会のクレルボー修道院長ベルナールと拮抗(きっこう)して、クリュニーの水準を高めた。その書簡には当時の歴史的事件の反響がみられる。1142年スペイン旅行の際、コーランその他のイスラム文献のラテン語訳を企画。自らも『サラセンの異端大要』Summa totius haeresis Saracenorum、『サラセンの異端駁論(ばくろん)』Contra haeresim Saracenorumを書き、十字軍に沸き立つ時代のさなかに、狂気、武力、敵意をもってではなく、理性、ことば、愛によって対処するよう説いた。また彼はベルナールの迫害を受けたアベラールを庇護(ひご)した。
[柏木英彦 2015年2月17日]
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