改訂新版 世界大百科事典 「ホスローとシーリーン」の意味・わかりやすい解説
ホスローとシーリーン
Khusraw wa-Shīrīn
イラン詩人ニザーミーのロマンス叙事詩《五部作》のうち,1177-81年にかけて6500句をもってうたわれた一編。ササン朝の王ホスロー2世(在位590-628)と美女シーリーンをモデルにした恋物語。ホスローとシーリーンとの長い愛の遍歴と結婚,暗殺された王の後を追って自害するシーリーンの悲劇は,イラン本土のほか,東方イスラム世界の各地で広く賞賛され,ミニアチュールに描かれ,ロシアではバレエとなって上演されている。美女シーリーンに関しては古来諸説あるが,ニザーミーはアルメニアの王女と設定している。技巧的で華麗,難解な比喩を用いることで知られる著者は,有名な神秘主義詩人でもあり,物語のうちひたすら神秘的な愛のみをシーリーンにささげる青年石工ファルハードと,現世の愛を求めるホスロー王との間で交わされる〈恋問答〉に神秘思想をよみ込んでいる。
執筆者:岡田 恵美子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報