改訂新版 世界大百科事典 「ボラゾール」の意味・わかりやすい解説
ボラゾール
borazole
化学式B3N3H6。三塩化ホウ素と塩化アンモニウムとを反応させてトリクロロボラゾールB3N3H3Cl3をつくり,これをテトラヒドロホウ酸リチウムLiBH4で還元して得られる,無色の芳香族臭ある液体。融点-58℃,沸点53℃,比重0.81(液体,沸点近くで),1.00(固体,融点近くで)。分子構造はベンゼンと似た平面正六角形で,B-N結合はπ結合性をもつ。また水素原子はアルキル基,アリル基で置換されるなどベンゼン類似の挙動を示すため,無機ベンゼンの異名がある。しかしベンゼンと比べて反応性が大きい。水とは冷時でもゆっくりと反応して水素,ホウ酸,アンモニアを生ずる。ND3,DCl,DCNなどの重水素化合物と反応させると,窒素と結合した水素のみ重水素化される。D2,NBD4,B2D6を反応させるとBと結合した水素が交換する。
執筆者:水町 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報