塩化アンモニウム(読み)えんかあんもにうむ(英語表記)ammonium chloride

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化アンモニウム」の意味・わかりやすい解説

塩化アンモニウム
えんかあんもにうむ
ammonium chloride

代表的なアンモニウム塩の一つ。工業的には塩安とよばれる。

 天然には火山噴出物や温泉の中にみいだされるが、工業的には、アンモニアソーダ法(塩安ソーダ法)で炭酸ナトリウム(ソーダ灰)を製造する際の副産物として生産される。

実験室ではアンモニアと塩酸中和硫酸アンモニウム塩化ナトリウム複分解などで得られる。無色結晶固体で、α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)の3種の変態があり、転移温度は184.3℃、および零下30.3℃である。高温では安定なα形は塩化ナトリウム型構造であるが、βおよびγ形は塩化セシウム型構造である。熱すると昇華して気体となり、塩化水素とアンモニアとに分解する。苦味を帯びた辛味があり、幾分吸湿性で、水によく溶ける。水溶液はほとんど中性であるが、加熱するとアンモニアが分離するので酸性となる。窒素肥料として大量に使用されるが、工業的にははんだづけ、めっきの際の表面清浄剤(フラックス)、乾電池の合剤、電解液の調製などに用いられる。分析試薬、医薬(去痰(きょたん)薬、利尿薬)としての用途もある。

[鳥居泰男]


塩化アンモニウム(データノート)
えんかあんもにうむでーたのーと

塩化アンモニウム
  NH4Cl
 式量  53.49
 融点  -
 沸点  -
 比重  1.53(測定温度17℃)
 結晶系 等軸
 溶解度 37.2g/100g(水20℃)
 昇華点 340℃

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩化アンモニウム」の意味・わかりやすい解説

塩化アンモニウム
えんかアンモニウム
ammonium chloride

化学式 NH4Cl 。無色の結晶または白色粒状の固体。冷たい辛みがある。いくぶん潮解性。比重 1.54 。 337.8℃で昇華し,NH3 と HCl に解離する。水に易溶。水溶液はほぼ中性であるが,煮沸するとアンモニアが抜けて,塩化水素が残るため酸性となる。メチルアルコール,エチルアルコールに可溶,アセトン,エーテル,酢酸エチルに難溶。亜鉛鉄板製造の融剤,乾電池,マンガン乾電池の製造,窒素肥料 (→塩安 ) などのほか,去痰剤にも用いられる。

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