改訂新版 世界大百科事典 「ボールトンワット商会」の意味・わかりやすい解説
ボールトン・ワット商会 (ボールトンワットしょうかい)
Boulton & Watt
イギリス産業革命期に活躍した世界最初の蒸気機関製造会社。蒸気機関の発明者であるJ.ワットとバーミンガムの金属加工業者ボールトンMatthew Boulton(1728-1809)との合名会社として1775年設立された。同商会は当初,蒸気機関の設計,設置,コンサルティング業務に専念し,シリンダーをはじめ部品の大部分は外注していた。しかし,82年ワットが回転式機関を発明し,工場の機関に直接回転動力を与えるようになると,ユーザーの業種は拡大し,機械建設に未経験な新しいユーザーは商会に対して機関の一括供給を求めてきた。そこで94年新たに結成されたボールトン・ワット父子商会によって,96年世界最初の近代的鋳造工場がソーホーに新設され,部品の全面的生産に乗り出すことになった。ここでは近代的工場管理が導入され,また熟練機械工が多数育成され,イギリス機械工業界のメッカとなっていった。同商会が1755年から1800年にかけて,イングランド,スコットランド,ウェールズに設置した蒸気機関の総数は321台にのぼり,文字どおり,イギリス産業革命の原動力を供給したといえよう。
執筆者:堀内 厚律
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報