改訂新版 世界大百科事典 「ポリツァイ条令」の意味・わかりやすい解説
ポリツァイ条令 (ポリツァイじょうれい)
Polizeiordnung
近世ドイツの立法の重要な類型の一つ。〈ポリツァイ〉とは〈公共体の善き秩序の維持〉を意味するが,後に拡大されて公共の福祉の増進およびそれを目的とする活動の全般を指すようになる。19世紀に〈公安の維持〉の意にまで縮小された概念よりも広い。15~18世紀に,帝国,領邦および都市でポリツァイ条令と称する法令が発布された。実質的には,ラント条令や鉱山令,僕婢令,裁判所令などの個別法令を含み,公共の福祉の増進を目的とする規制的な政策立法を総称する。動揺する身分制秩序の補強から重商主義経済政策の遂行まで,さまざまの政策目的に奉仕し,風俗,衛生,保健,教育,経済,労働など,国民生活の全般を規制の対象にする。公法のみならず,私法にも及び,家族,相続,契約(暴利の取締り,価格の公定,締約強制)規制なども含む。規制の態様は,義務・負担の賦課とその違反に対する制裁で,権利本位の純粋私法規範とは異なっている。
執筆者:石部 雅亮
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報