マイヤール(読み)まいやーる(その他表記)Robert Maillart

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マイヤール」の意味・わかりやすい解説

マイヤール
まいやーる
Robert Maillart
(1872―1940)

スイスの構造技術者。ベルンに生まれる。チューリヒ連邦工科大学で学んだのち、1902年にチューリヒで構造設計事務所を開設した。独特の3ヒンジアーチを用いた鉄筋コンクリート構造のマイヤール式架橋方式を発表して認められ、シュバントバッハ橋やタバナサ橋を建設した。1910年には梁(はり)をもたない床スラブ構造を考案し、実際にチューリヒの百貨店無梁版構造(むりょうばんこうぞう)で設計した。1912年からロシアへ移り仕事をしたが1917年の革命後帰国し、ジュネーブ、ベルン、チューリヒに事務所を再設のうえ、スイスを中心に数多くの構造物を手がけた。晩年の作品にスイス国土博覧会のセメントホールがある。

[藤原恵洋・村松貞次郎

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改訂新版 世界大百科事典 「マイヤール」の意味・わかりやすい解説

マイヤール
Robert Maillart
生没年:1872-1940

スイスの構造技術者。ベルン生れ。チューリヒの連邦工科大学卒。とりわけ橋梁分野にその才能を発揮して,エンガディンのツオツ橋梁(1901)以降,スイス各地に鉄筋コンクリート造のまったく新しい橋梁デザインを見せた。彼のデザインは,古典的な原則を捨て,構造上の機能をそのまま橋の諸要素として統合した点に特徴がある。なかでも箱形断面の3鉸アーチを原則としたもの(サルジナ渓谷橋,1930),あるいは剛性棒状アーチによる橋梁(シュワントバハ橋,1933)が特筆される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マイヤール」の意味・わかりやすい解説

マイヤール
Maillart, Robert

[生]1872.2.6. ベルン
[没]1940.4.5. ジュネーブ
スイスの建築技師。 1890~94年チューリヒ工科大学で構造工学を学んだのち,フランスで F.アンヌビクに師事。鉄筋コンクリート構造の分野でプレキャストコンクリートやコンクリートスラブによるアーチの開発など新生面を開き,スイス各地およびロシアの諸都市に多くの橋や建築を建設した。チューリヒの百貨店のために用いた,プレキャストコンクリートによる円柱構造 (1910) は特に有名。主作品はタバナサ橋 (05,27破壊) ,シュワントワッハ橋 (24) ,ザルギナトーベル橋 (30) ,トゥール橋 (33) やチューリヒ博覧会におけるスイス・ポートランド・セメント会社のパビリオン (39) 。

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世界大百科事典(旧版)内のマイヤールの言及

【橋】より

… 鋼橋に後れをとったコンクリートの分野でも,20世紀前半のヨーロッパに2人の天才技術者が現れた。すなわちフランスのフレイシネEugène Freyssinetはプレストレストコンクリートの特許を得て,1938年それを用いた初めての橋を実現させ,スイスのマイヤールRobert Maillartは力学的な合理性を生かした,独創的なデザインの鉄筋コンクリート橋を数多く設計した。 戦火で中断された橋梁技術は,第2次世界大戦後とくにヨーロッパでめざましい復活をとげた。…

【橋】より

… 鋼橋に後れをとったコンクリートの分野でも,20世紀前半のヨーロッパに2人の天才技術者が現れた。すなわちフランスのフレイシネEugène Freyssinetはプレストレストコンクリートの特許を得て,1938年それを用いた初めての橋を実現させ,スイスのマイヤールRobert Maillartは力学的な合理性を生かした,独創的なデザインの鉄筋コンクリート橋を数多く設計した。 戦火で中断された橋梁技術は,第2次世界大戦後とくにヨーロッパでめざましい復活をとげた。…

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