日本大百科全書(ニッポニカ) 「マルチチャンネル放送」の意味・わかりやすい解説
マルチチャンネル放送
まるちちゃんねるほうそう
multichannel broadcasting
一つのチャンネルID(チャンネル識別番号)で複数のチャンネルを送信する放送方式。チャンネル数は最大4チャンネルまで設定できる。たとえば地上デジタル放送ではNHKの総合テレビが二つ、NHKの教育放送Eテレおよび放送大学が三つのマルチチャンネルを用意している。BSデジタル放送ではNHK、J SPORTS(ジェイスポーツ)などが四つ、WOWOW(ワウワウ)、放送大学およびスター・チャンネルなどが三つのマルチチャンネルを備えている。またCS-1(東経110度の赤道上にある通信衛星を使ったCSデジタル放送)で、スカチャン(スカパーJSAT(ジェイサット)が送信するテレビ放送チャンネル)が四つのマルチチャンネルを備えている。放送形態としては、常時マルチチャンネル放送を行うもの、常時は一つのチャンネルであるが必要に応じて随時マルチチャンネルに切り替えるものなど、事情に応じた利用法を採用している。常時マルチチャンネル放送の場合、たとえばドラマ、コンサートやスポーツ中継、映画など異なるジャンルの番組を並行して放送する利用法がある。随時に活用するのは、ニュースなどの定時番組と大相撲(おおずもう)やアメリカ大リーグの生中継が重なったときに起用する利用法などである。他の民放各社も多くの局が地上デジタル放送やBSデジタル放送で1チャンネルIDごとに、二つないし三つのマルチチャンネル放送を行う態勢を備えているが、現時点でこれが活用されることはまだ少なく、今後の普及に期待がもたれる。
画質に関しては、デジタル衛星ハイビジョン本放送開始時の2000年(平成12)には、ハイビジョン(HDTV)画質のチャンネルは一つで、他のチャンネルは標準画質であったが、2011年以降は基本的にすべてのチャンネルがハイビジョン画質で見られるようになっている。
[吉川昭吉郎]