NHK(読み)えぬえいちけー

日本大百科全書(ニッポニカ) 「NHK」の意味・わかりやすい解説

NHK
えぬえいちけー

日本放送協会の略称放送法(昭和25年法律132号)に基づく特殊法人で、「公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように放送を行うことを目的」(同法7条)とし、受信料を運営財源とする公共放送事業体。

後藤和彦

歴史

NHKの歴史はそのまま日本の放送の歴史といえる。1925年(大正14)3月22日、社団法人東京放送局が仮放送を開始、日本の最初の放送局となった(現在の放送記念日はこの日にちなむ)。同年中に大阪、名古屋も開局、三者は受信料を財源とする政府特許の社団法人として相互に独立し放送事業を展開した。しかし全国放送網の実現を意図する逓信(ていしん)省の働きかけで1926年8月、3局が一本化した社団法人日本放送協会が成立した。1931年(昭和6)には第二放送を開始(東京)、教育放送の充実を図った。1934年には機構が改められ、中央放送局制となり、番組の編成も全国的に統一されることとなった。1935年には学校放送の全国中継、アメリカ西部向け海外放送が始められた。1936年2月の二・二六事件の収拾に際しては、戒厳司令部発表の「兵に告ぐ」の放送(29日)が行われ、放送による説得の効果を国民の心に刻み込んだ。同年8月にはオリンピック大会実況をベルリンから中継した。河西三省(かさいさんせい)アナウンサーの有名な「前畑がんばれ」の放送はこの中継のときのことである。1940年5月末にはラジオの受信契約数は500万を突破した。しかし翌年12月に第二次世界大戦に突入してからは、第二放送は停止、放送電波管制の実施、気象放送中止、と放送は全面的に国の戦時体制に組み込まれ、NHKは実質的に国家管理のもとに置かれた。

 1945年(昭和20)8月15日の終戦に際しては、天皇による詔勅の放送(玉音放送)という非常手段がとられ、事態の収拾に大きな効果をあげた。占領下、NHKは連合国最高司令部(GHQ)の管理下に置かれ、民間情報教育局(CIE)ラジオ課の直接的で強力な番組指導を受けた。GHQは、全国放送網を有するNHKの放送の影響力を重視し、占領目的達成の情報伝達手段として積極的に活用したのである。この占領時代の番組指導によって「街頭録音」「放送討論会」「クイズ番組」などが新たに導入され、さらに演出や編成の面にアメリカの商業放送の方式が深く浸透することになった。1950年6月1日には放送法が施行され、従前の社団法人組織は解散、その財産を受け継いで、放送法に基づく特殊法人「日本放送協会」が誕生した。その経営に関する最高の議決機関として、国会の同意を得て内閣総理大臣が任命する12名の委員からなる経営委員会が置かれることになった。同委員会は国民を代表し、NHKの収支予算、番組編成計画など経営の基本方針を決定し、また日常業務執行の最高責任者である会長を任命する。NHKの収支予算、事業計画は毎年度、総務大臣の意見書とともに国会に提出され、その承認を受ける仕組みとなっている。

 1950年の放送制度改革によって新たに商業放送の設置が認められ、それまで独占的に放送を行ってきたNHKは、翌51年9月から、商業放送と競争的立場に立たされることになった。その後、1952年2月に国際放送を5方向で再開、その年の8月にラジオの受信契約数は1000万を突破した。翌1953年2月、NHKは日本で初めてテレビの本放送を開始した。さらに1956年12月にはカラーテレビの実験放送、57年12月からはFM実験放送を開始し、59年1月には純教育局として教育テレビを開局した。1960年9月にはカラーテレビが本放送となり、62年3月にはテレビの受信契約数が1000万を超えた。

[後藤和彦]

現状と将来

NHKは現在、国内地上放送としてはテレビ2系統(総合、教育)、中波ラジオ2系統(第1、第2放送)、FMラジオ1系統の放送を行っている。放送衛星を利用した衛星放送は1989年(平成1)6月に衛星第1、第2ともに本放送を開始した。さらに、1994年からハイビジョン実用化試験放送を行ってきたが、2000年12月からデジタルハイビジョンの本放送が開始された。そのほかに国外向けの国際放送をテレビとラジオ(短波)で行っている。テレビはヨーロッパ・北米地域向けとアジア・太平洋地域向けにそれぞれ2チャンネルの放送が行われており、世界のほぼ全域でテレビ国際放送が見られるようになっている。

 こうした世界的規模の放送の実施を支えるための調査研究機関として、NHKには放送技術研究所と放送文化研究所があり、技術面から社会科学的側面まで多方面におよぶ調査研究活動を展開している。また、海外には総局、支局、駐在、計27を配置して国際化時代の放送に備えている。それらの活動の財政基盤のほとんどは受信料収入であり、2006年度その額は6138億円である。また職員数は1万1642人である。

 こうしたNHKの歴史と現状であるが、その将来はけっして容易なものとはいえない状況にある。デジタル化をはじめ大きな技術革新の進展で、通信衛星利用の有料デジタル多チャンネルテレビ放送の出現、ケーブルテレビの多チャンネル化、インターネットの放送的利用の拡大など、長い歴史をもつNHKにもいまだかつて経験のないような厳しい経営環境条件が次々加わってきているのである。

[後藤和彦]

『日本放送協会編『放送五十年史』(1977・日本放送出版協会)』『日本放送協会編『NHK年鑑』各年版(日本放送出版協会)』


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