日本大百科全書(ニッポニカ) 「地上デジタル放送」の意味・わかりやすい解説
地上デジタル放送
ちじょうでじたるほうそう
digital terrestrial broadcasting
電波塔から送信する地上波放送のうち、デジタル信号で映像や音声データを送信するテレビ放送サービス。略称「地デジ」。アナログ放送に比べ高画質・高音質の放送や、電子番組表などのデータ放送、携帯端末向けのワンセグ放送を含めた多チャンネル化が可能になった。インターネットを組み合わせて、各家庭から番組アンケートに参加したり、番組で紹介された商品を注文したりといった双方向のサービスも受けられる。また、アナログ放送ではVHF帯とUHF帯で計370メガヘルツ幅の周波数帯を使っていたが、デジタル放送への移行で従来のUHF帯の一部の240メガヘルツ幅に減らすことができる。
地デジの放送は2003年(平成15)12月に始まりアナログと同一内容のサイマル放送を実施していたが、2011年7月に、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島の3県を除く44都道府県でアナログ放送が終了した。3県でも2012年3月末に終了し、地デジに完全移行した。アナログ放送が完全に終わると、アナログ放送に使っていた周波数に空きが生じ、携帯端末向けマルチメディア放送、防災無線、高度道路交通システムなどに割り当てることが可能になる。携帯電話にも割り当てられるため、通信の混雑緩和につながるとの期待もある。世界的にはイギリスとアメリカが1998年に放送開始したのをはじめ、50か国以上で導入されている。
[乾 達]