化学辞典 第2版 「マンガン酸塩」の解説
マンガン酸塩
マンガンサンエン
manganate
Mnを中心原子とするオキソ酸(塩)は,もっとも一般的な MnⅦの過マンガン酸(塩)のほかに,MnⅥ,MnⅤ,MnⅢのものがある.ただし,普通にマンガン酸塩といえば,MnⅥのMⅠ2MnO4を意味する.【Ⅰ】マンガン(Ⅵ)酸塩(manganate(Ⅵ)):MⅠ2MnⅥ O4.遊離酸は単離されず,塩のみが得られるが,純粋なものが得られるのはアルカリ金属塩とBa塩のみである.アルカリ金属塩は,二酸化マンガンとアルカリ金属との混合物を加熱して空気または硝酸塩で酸化するか,過マンガン酸塩の水溶液をアルカリと反応させてつくる.暗緑色の結晶で,アルカリ性水溶液中では安定である.正四面体型の [MnO4]2- を含む.硫酸塩やクロム酸塩と同型.中性または酸性では不均化する.
3MnO42- + 2H2O →
MnO2 + 2MnO4- + 4OH-
酸化性がある.K塩の用途は別項参照([別用語参照]マンガン(Ⅵ)酸カリウム).BaMnO4(256.26)はマンガン緑とよばれ,顔料に用いられる.[CAS 14333-14-3:[MnⅥO4]2-]【Ⅱ】マンガン(Ⅴ)酸塩(manganate(Ⅴ)):MⅠ3MnⅤ O4.Li,Na,K,Baの塩が得られている.Na塩は,MnO2と過酸化ナトリウムNa2O2との反応や,KMnO4とNaOHとの混合水溶液を低温で亜硫酸ナトリウムNa2SO3で還元すると得られる.淡青色の結晶.正四面体型のMnO43-を含む.0 ℃ では,固体は空気や湿気を遮断すれば安定である.加熱すると分解する.また,水溶液は濃度8 mol L-1 以上のNaOH共存下では安定であるが,薄めるとMnO2とNa2MnO4に不均化する.K塩は800 ℃ まで安定である.[CAS 14333-15-4:[MnⅤO4]3-]【Ⅲ】マンガン(Ⅲ)酸塩(manganate(Ⅲ)):MⅠ5MnⅢ O4.Na塩Na5MnⅢ O4(233.88)が得られている.計算量のMn2O3とNa2O2の混合物を長時間加熱すると得られる.赤色の斜方晶系結晶.ひずんだ正四面体型の [MnO4]5- を含む.Mn-O約1.88~1.91 Å.湿った空気中では分解する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報