日本大百科全書(ニッポニカ) 「二酸化マンガン」の意味・わかりやすい解説
二酸化マンガン
にさんかまんがん
manganese dioxide
マンガンと酸素の化合物。酸化マンガン(Ⅳ)ともいう。化学式MnO2、式量86.9。天然に軟マンガン鉱(β(ベータ)型、パイロリュース鉱ともいう)および硬マンガン鉱(α(アルファ)型)として産出。正方晶系のルチル型構造(β型)のほかに多くの変態が知られているが、β型およびγ(ガンマ)型が普通。過マンガン酸カリウムを過酸化水素で還元してα型が得られる。硝酸マンガン(Ⅱ)を酸素気流中で約150℃に加熱するとβ型が得られ、硫酸マンガン(Ⅱ)の硫酸酸性水溶液を電解するか、マンガン(Ⅱ)塩水溶液の低温酸化によってγ型が得られる。いずれも灰色から灰黒色の粉末。MnO1.93のようなベルトライド化合物が知られる。両性酸化物であるが希酸やアルカリに作用しにくく、水にも溶けない。β型の比重5.03。かなりの導電性がある。アルカリ性でマンガン(Ⅱ)化合物の酸化またはマンガン(Ⅶ)化合物の還元により、水和物MnO2・2H2Oが沈殿する。酸化剤となる。γ型が乾電池の減極剤に用いられる。マッチ、花火の材料となり、ガラスの青色を消すのに、また乾性油の製造などに用いる。実験室で酸素発生の触媒、有機化学の分野でアルコールの酸化などに用いる。
[守永健一・中原勝儼]