化学辞典 第2版 「過マンガン酸」の解説
過マンガン酸(塩)
カマンガンサン
permanganic acid(permanganate)
HMnO4(119.94).Ba(MnO4)2と硫酸とを水溶液中で反応させると水溶液中に生成する.遊離酸は得られない.熱および光によって分解し,酸化マンガン(Ⅳ)水和物を生じる.酸化力が強く,I2 をIO3-に,HClを Cl2 に酸化し,一般の有機物を二酸化炭素にまで酸化する.塩として代表的なのはK塩(過マンガン酸カリウム)であるが,それ以外のアルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩,アンモニウム塩,Ag,Alなど多くの金属塩が得られている.アルカリ金属塩は,Mn2+ 塩か,二酸化マンガンMnO2を水酸化アルカリおよび酸化剤とともに溶融してマンガン(Ⅵ)酸塩をつくり,これを電解酸化,または酸化剤で酸化すると得られる.K塩とAl2(SO4)3とからAl塩が得られ,これと種々の金属の酸化物または水酸化物からAl(OH)3を沈殿させて除き,各金属の塩がつくられる.実験室では,Mn2+ をNaBiO3やPbO2などの強酸化剤で酸化すると,MnO4-となる.この反応は Mn2+ の定性反応に利用される.MnO4-は正四面体で,Mn-O約1.63 Å である.塩は電荷移動スペクトルによる濃い紫色を呈する.塩はかなり安定であるが,空気中で徐々に分解し,太陽光で分解が促進される.過マンガン酸塩は水溶液中で徐々に分解する.
4MnO4- + 4H+ → 4MnO2 + 3O2 + 2H2O
また,水溶液を強アルカリ性とすると,緑色のMnO42-となる.
4MnO4- + 4OH- → 4MnO42- + O2 + 2H2O
このMnO42-の水溶液は,酸性にすると不均化が起こって一部が紫色のMnO4-になる.
4MnO42- + 4H+ → MnO2 + 2MnO4- + 2H2O
このように,マンガン酸(塩),過マンガン酸(塩)の水溶液は変色するので,カメレオン液といわれる.酸性水溶液中におけるMnO4-の酸化反応は,
MnO4- + 8H+ + 5e- → Mn2+ + 4H2O
で表され,中性および弱塩基性での酸化反応は,
MnO4- + 2H2O + 3e- → MnO2 + 4OH-
強アルカリ性での反応は,
MnO4- + e- → MnO42-
で示される.過マンガン酸塩は酸化剤として用いられる.[CAS 13465-41-3][別用語参照]過マンガン酸カリウム,過マンガン酸塩滴定
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報