日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ムクンダラーム・チャクラバルティー
むくんだらーむちゃくらばるてぃー
Mukundarām Cakrabartī
生没年不詳。インドのベンガリー中世文学を代表する宗教詩人。16世紀前半に西ベンガル州に生まれる。今日残る唯一の作品、長編叙事詩『チョンディ神霊験(れいげん)記』(16世紀末~17世紀初頭完成)によって広く知られる。この作品の叙述によれば、教養あるバラモンの家庭に生まれた彼は、中世のイスラム教徒支配の混乱のなかで自らの土地を失い、家族を連れて窮乏のうちに放浪生活を送るが、やがてベンガル南部の村に領主の庇護(ひご)を得て定住。放浪の途次チョンディ神から受けたお告げに従い、霊験記を完成したという。この作品は、その宗教性の高さ、社会観察の深さ、文学的構成と表現の巧みさなどにおいて、ベンガルの数多い霊験記文学のなかでも傑出したものである。
[大西正幸]