日本大百科全書(ニッポニカ) 「モゴール」の意味・わかりやすい解説
モゴール
もごーる
Mogol
アフガニスタン西部に残るモンゴル系の民族。ゴラート高原を中心に50ほどの村に約1万人が散在する。その祖先は13世紀にイル・ハン国の将軍ニクダル・オグランに率いられたモンゴル将兵で、彼の死後ヘラートのクルド朝についてゴラート高原に住み着いたといわれる。しかし、19世紀末にタイマニ人との抗争に敗れ、多くの者が北へ逃れ散った。モゴールは厳格な内婚制を維持して長らく民族としての意識を保ってきたが、現在はそれがまったく崩壊している。モゴール語も一部の古老に記憶があるだけで事実上死語となっている。その文化もモンゴルのおもかげを残してはおらず、宗教は熱心なスンニー派イスラム教徒で、物質文化も周辺の民族パシュトゥンなどと変わりはない。生業は定住的な農耕と牧畜で、小麦、大麦などを栽培し、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマを飼う。しかし、彼らは比較的裕福な遊牧パシュトゥンの小作をしている場合が多い。
[佐々木史郎]
『梅棹忠夫著『モゴール族探検記』(岩波新書)』