モゴール語(読み)もごーるご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モゴール語」の意味・わかりやすい解説

モゴール語
もごーるご

モンゴル系の他の諸言語から、はるか遠くに離れたアフガニスタンに孤立して存在するモンゴル系の一言語である。

 この言語の研究は多くはないが、古くフィンランドのラムステッドG. J. Ramstedの研究があり、また1955年にはわが国の京都大学から派遣された学術探検隊によって調査され、さらに、1970年代の後半のドイツのバイエルM. Weiersの調査研究もみられ、徐々にこの言語の概要が知られてきている。

 モゴール語は、13世紀の元朝時代の駐留モンゴル人の後裔(こうえい)の言語と考えられ、古い言語的特徴を保持している一方で、他のモンゴル系言語にはみられない変化を遂げた部分もある。古い特徴を保持した例として、現在では、いかなるモンゴル系の言語も失った音節qïとïの残存がみられる。他の諸方言ではqï>ki, ï>ɡiの変化を遂げている。

[小沢重男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モゴール語」の意味・わかりやすい解説

モゴール語
モゴールご
Mogol language

アフガニスタンのヘラート州に行われているモンゴル語話し手はイル・ハン国の駐留モンゴル人の子孫とみられ,約5万人。長母音など古い特徴を多く保持していると認められるが,実は,ペルシア語なかに,その音韻構造によって受入れたモンゴル語の単語形態素を混ぜた言語で,現在ではおそらく隠語的機能を有するものであろう。この言語の資料としては,G.ラムステットの調査報告"Mogholica" (1906) ,1955年に京都大学探検隊 (岩村忍ら) が発見したテキスト"Zirni Manuscript" (61) ,M.ワイヤースの著書"Die Sprache der Moghol der Provinz Herat in Afganistan" (72) などがある。

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