日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤワル」の意味・わかりやすい解説
ヤワル
やわる
Ghazi Mashal Ajil al-Yawer
(1958― )
イラクの政治家。イラク北部モスル生まれ。イスラム教スンニー派。イラクでもっとも勢力をもつシャンマル人出身で、家系は代々、首長をつとめた。サウジアラビアやイギリスの大学で学び、アメリカではジョージワシントン大学で修士号(土木工学)を取得した。フセイン体制の間はサウジアラビアにとどまり、通信会社の副社長を務めていたが、2003年4月、イラク戦争でフセイン政権が崩壊すると帰国。同年7月、シャンマル人代表として、イラク人による暫定行政機構「統治評議会」のメンバーに選ばれた。2004年6月、暫定政府発足と同時に大統領に就任。
温厚な人柄で人望があり、暫定政府大統領時代はアメリカ軍主体の多国籍軍に対するイラク政府の決定権を強く主張する一方、政治プロセスへの参加を拒否するスンニー派勢力に国民融和を訴え続けた。2005年1月の暫定国民議会選では、スンニー派政党「イラク人」を率いて5議席を獲得した。いったん同議会議長に内定したが、実質権限がないとして拒否。2005年4月発足の移行政府で副大統領に就任したが、同年12月に国民議会選挙が実施され、2006年5月の新政府発足に伴い退任。
[相原 清]