よき愛の書(読み)よきあいのしょ(その他表記)El libro de buen amor

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「よき愛の書」の意味・わかりやすい解説

よき愛の書
よきあいのしょ
El libro de buen amor

スペインの詩人フアン・ルイスの物語詩集。 1330年頃成立。 1728連の詩句から成りラテン,フランス,イタリアなどの寓話改作聖母への賛歌など雑多な要素をもつ。作品の中心は,自堕落な恋愛遍歴を語った自伝体の物語にあり,社会の底辺に生きる人物像を写実的に描いて,のちの『セレスティーナ』,悪者小説などの先駆的作品とされ,中世スペイン文学最大の傑作とみなされている。

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世界大百科事典(旧版)内のよき愛の書の言及

【スペイン文学】より

…13世紀になると〈メステル・デ・クレレシーアmester de clerecía〉と呼ばれる聖職者階級の文芸が盛んになるが,代表的作品は,現在にその名を知られる最初のスペイン詩人G.deベルセオの手になる,聖母マリア伝説を素材とした25編の物語詩集《聖母の奇跡》である。スペイン文学における個性的な批判精神の発露は,14世紀のフアン・ルイスの《よき愛の書》をもってその嚆矢(こうし)とする。著者自身の恋愛沙汰を主題にした韻文による自伝とも読めるこの作品は,風刺とユーモア,そして多義的な文体によって聖なるものと俗なるものがみごとに調和した大作で,中世ヨーロッパ文学の最高の達成のひとつとなっている。…

【ルイス】より

…14世紀スペインの歌物語《よき愛の書》の語り手で,作者と思われる人物。〈イータの首席司祭〉の職名で知られる。…

※「よき愛の書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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