セレスティーナ(読み)せれすてぃーな(英語表記)La Celestina

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セレスティーナ」の意味・わかりやすい解説

セレスティーナ
La Celestina

スペインの戯曲形式の小説。原題は『カリストとメリベアの悲喜劇』 Tragicomedia de Calisto y Melibea。作者はユダヤ人でタラベラの町長フェルナンド・デ・ロハスとされる。セレスティーナは中心人物の名前で,J.ルイスの『よき愛の書』までさかのぼることのできる女性像。欲望に身を焼かれる男女の運命をあやつる誘惑者として,スペイン文学のなかで一類型を作っている。 1499年のブルゴス版が残された最古の版。近代写実主義のさきがけともいうべき作品で,ヨーロッパ文学に大きな影響を与え,スペイン文学では「悪者小説」の発生を促すことになった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「セレスティーナ」の意味・わかりやすい解説

セレスティーナ
せれすてぃーな
La Celestina

スペインの小説。正式の題名は『カリストとメリベアの悲喜劇』で、一般には登場人物の名に由来する『ラ・セレスティーナ』で知られている。もっとも古い版(1499)では16幕、その後の版では21幕からなる対話体の小説で、作者は不詳だが、第二幕から第六幕までをフェルナンド・デ・ローハス(?―1541)が書いたのは確かである。青年貴族カリストと豪商の娘メリベアの悲恋が中心で、改宗ユダヤ人の主人公ローハスの厭世(えんせい)観を基調とした冷徹なリアリズムによって、奸知(かんち)にたけた老婆セレスティーナをはじめとする下層階級の人々の性格が活写されている。近代的写実主義の先駆的な作品として、後世に大きな影響を与えた。

桑名一博

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例