改訂新版 世界大百科事典 「ラダク」の意味・わかりやすい解説
ラダク
Ladakh
インド北西部のジャンムー・カシミール州東部地方を中心に,インド・パキスタン休戦ライン以西のパキスタン側のアーザード・カシミール南東部,および1962年の中印国境紛争以後,中国管理下(インドはこれを認めていない)にあるアクサイ・チン高原などの北東端部にまたがる地方。面積11万8500km2。北からカラコルム,ラダク,ザスカル,大ヒマラヤの4山脈が北西から南東に走る山岳地帯で,その間に介在するインダス川源流部の河谷でも標高2500~4500mの高所にある。気候は冷涼乾燥で,中心都市レーLeh(標高約3500m)の年平均気温は5.5℃,年降水量は116mmにすぎない。レーを含む中部および東部地方は,気候,地形だけでなく,言語(チベット語),宗教(ラマ教)の点でもチベットと類似し,小チベットとも呼ばれる。山間オアシスでの小麦,大麦,ソバの栽培,山地での羊,ヤギの移牧が主たる産業にすぎなかったが,中印紛争まではインドと中央アジアまたチベットとを結ぶ中継交易で栄えた。1531年以来カシミール谷よりイスラム教徒が進出し,いまでは西部地方を中心に人口の4分の3がイスラム教徒である。19世紀半ばにジャンムー・カシミール藩王国領となり,インド,パキスタン分離独立時に至った。
→カシミール
執筆者:応地 利明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報