日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラーフラバドラ」の意味・わかりやすい解説
ラーフラバドラ
らーふらばどら
Rāhulabhadra
3世紀ころのインドの思想家。ナーガールジュナ(龍樹(りゅうじゅ))を始祖とするインドの中観(ちゅうがん)学派の流れに属し、アーリヤデーバ(提婆(だいば))の後継者であったと伝えられる。一部にはナーガールジュナの師であったとする説もある。伝記不詳。羅睺羅(らごら)または羅睺羅跋陀羅(らごらばっだら)と漢音写する。般若波羅蜜(はんにゃはらみつ)や『法華経(ほけきょう)』をたたえる詩頌(しじゅ)をつくり、そのほか、アサンガ(無著(むじゃく))の『順中(じゅんちゅう)論』『入大乗(にゅうだいじょう)論』、真諦(しんだい)訳の『摂(しょう)大乗論釈』に彼のことば(詩頌)が断片的に伝えられる。『付法蔵因縁伝(ふほうぞういんねんでん)』巻6には、智慧(ちえ)優れ、名徳高く、美声と才能を有し、仏法の道理を深く悟り邪道を打ち砕いた、と伝える。
[瓜生津隆真 2016年12月12日]
『ターラナータ著、寺本婉雅訳『ターラナータ印度仏教史』(1928・丙午出版社)』▽『宇井伯寿著『印度哲学研究 第1巻』(1965・岩波書店)』▽『中村元著『人類の知的遺産13 ナーガールジュナ』(1980・講談社)』