ラーモス(読み)らーもす(その他表記)Graciliano Ramos

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラーモス」の意味・わかりやすい解説

ラーモス
らーもす
Graciliano Ramos
(1892―1953)

ブラジルの代表的な小説家。故郷、北東部地方の社会問題を提起しているが、作風は優れて心理的、内省的である。『サン・ベルナルド』(1934)では、過渡期混乱に乗じて農園主にまでのし上がった男の人間疎外が、『苦悩』(1936)では、没落した農園主階級の男の、殺人にまで駆り立てる閉塞(へいそく)した生活が、内的独白、意識の流れを通じて描かれている。干魃(かんばつ)に苦しみ、社会的にも虐げられた牛飼い一家の生活を乾いて単調な文体で描いた『乾いた人々』(1938)はブラジルの古典的な名作である。また、政治犯として投獄されたときの『獄中記』(1953)は優れたヒューマン・ドキュメントである。

[高橋都彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android