リボニア年代記(読み)リボニアねんだいき

改訂新版 世界大百科事典 「リボニア年代記」の意味・わかりやすい解説

リボニア年代記 (リボニアねんだいき)

13世紀初頭,バルト海東沿岸地域に進出したドイツ騎士修道会の活動の歴史をつづった2種の年代記で,ラトビアエストニア,いわゆるリボニア地方の歴史にとって重要な著作。一つは修道士ヘンリクス作とされるラテン語の《リボニア年代記Henrici chronicon Livoniae》で1184年から1227年までの記録である。いま一つは著者不明の1万2017行からなる中世高地ドイツ語の《リボニア押韻詩年代記Livländische Reimchronik》で,1236年からドイツ騎士修道会がリボニア全域の支配を確立した90年までの歴史を収めている。両年代記とも12世紀以来ラトビアのダウガバ川(ドイツ名デュナ川)流域に到来したドイツ人商人の活動から始め,ついでキリスト教布教を名目リガを根拠地としてリボニア地方を席巻した刀剣騎士修道会Schwertbrüderorden(1202-36),そののちドイツ騎士修道会と合同したリボニア騎士修道会(1237-1561)の原住民との抗争史を詳しく報告している。異教の神々を頂く原住民,インド・ヨーロッパ語族系バルト諸族,とくにラトビア人リトアニア人,フィン系リーブ人,エストニア人などの同地方における民族情勢を記録しており,とくに初期ラトビア史の研究にとって重要な史料である。ラトビアの主都リガとエストニアの大学都市タルトゥ(ドイツ名ドルパート)はドイツ人によって13世紀に建設された要塞都市で,この《リボニア年代記》の中心舞台となった。ドイツ語訳はもとより,英訳もある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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