日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラトビア人」の意味・わかりやすい解説
ラトビア人
らとびあじん
Latvians
バルト語派内の東バルト語に属するラトビア語を母語とする民族。自称はラトビェシLatviesi。ラトビア共和国に138万8000人(1995)が住む。レット人ともいう。かつての四つの部族ラトガリLatgali、セリSeli、ゼムガリZemgali、クルシKuršiの子孫であり、その居住域はいまも四つの文化圏を構成する。母語であるラトビア語は、リガを中心に話されるもっとも優勢な中央方言、東部で話される上部方言、北西部で話されるリボニア方言に分かれる。
ラトビアの歴史においては13世紀以降ドイツのリボニア騎士団(ドイツ騎士団)やスカンジナビアの支配が長く、その強い文化的影響を受け、宗教はルター派が優勢である。このような文化・宗教的伝統においてラトビア人はむしろフィン系のエストニア人に近い。ただしリトアニア語的要素をもったラトビア語方言を話すラトガリア人(レトガラ)だけはポーランドの影響下に伝統的にカトリック教徒である。第一次・第二次両世界大戦下には独立を達成したが、1940年にソ連内のラトビア共和国となり、1991年のソ連解体により独立、現在に至っている。戦時中に多くの人口がアメリカ、カナダなどに亡命した。伝統的な生業は農耕、漁業、養蜂(ようほう)。19世紀なかばまで富裕農家に大家族が存在したが、基本的な家族形態は核家族である。
[伊東一郎]
『村田郁夫編『ラトビア語基礎1500語』(1994・大学書林)』