改訂新版 世界大百科事典 「リンモリブデン酸塩」の意味・わかりやすい解説
リン(燐)モリブデン酸塩 (りんモリブデンさんえん)
phosphomolybdate
リンとモリブデンからつくられるヘテロポリ酸の塩の俗称。正しくはモリブドリン酸塩という。MI4[P2Mo12O41],MI3[PMo12O40],MI6[P2Mo18O62]などがある。
ドデカモリブドリン酸塩dodecamolybdophosphate
一般式MI3[PMo12O40]。[PMo12O40]3⁻の構造はPを中心原子としてポリ酸の配位した多核錯体である(図)。リン酸とモリブデン酸の水溶液を沸騰させ,エーテルで抽出した遊離酸を水に溶かし,真空硫酸デシケーター中で濃縮すると遊離酸結晶が得られる。またNa2HPO4と市販のモリブデン酸アンモニウムを硝酸酸性水溶液中で反応させるとアンモニウム塩が得られる。ドデカモリブドリン酸H3[PMo12O40]・30H2Oは橙黄色八面体晶。空気中で風解する。78~98℃で潮解する。アンモニウム塩(NH4)3[PMo12O40]・6H2Oは深黄色晶で水に難溶。カリウム塩K3[PMo12O40]・4H2Oは黄色晶。ナトリウム塩Na3[PMo12O40]・10H2Oは風解しやすい黄色菱面体晶。
オクタデカモリブド二リン酸塩octadecamolybdodiphosphate
一般式MI6[P2Mo18O62]。[P2Mo18O62]6⁻イオンの構造はリンタングステン酸塩の[P2W18O62]6⁻と同じである。濃モリブデン酸塩水溶液に熱時過剰のリン酸を反応させ,次いで塩化アルカリを加えるとアルカリ塩が得られる。オクタデカモリブド二リン酸H6[P2Mo18O62]・33H2Oは橙色柱状晶。アンモニウム塩(NH4)6[P2Mo18O62]・14H2O,カリウム塩K6[P2Mo18O62]・14H2O,ナトリウム塩Na6[P2Mo18O62]・31H2Oなどはいずれも黄色晶で水に溶ける。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報