化学辞典 第2版 の解説
モリブデン酸アンモニウム
モリブデンサンアンモニウム
ammonium molybdate
いわゆるオルト塩(NH4)2MoO4も得られているが,この名称の市販品は,七モリブデン酸六アンモニウム四水和物,通称,パラモリブデン酸アンモニウム(NH4)6[Mo7O24]・4H2Oであることが多い.【Ⅰ】テトラオキシドモリブデン酸(2-)二アンモニウム:(NH4)2MoO4(196.01).MoO3と濃アンモニア水とを反応させ,アルコールを加えて沈殿させると得られる.無色の単斜晶系結晶.空気中に放置すると徐々にアンモニアを失う.水,酸などに可溶.MoO42-は pH 7以上で水溶液中に存在する.pH < 7では七モリブデン酸(6-)イオン,八モリブデン酸(4-)イオンとの平衡が存在する.[CAS 13106-76-8]【Ⅱ】テトラコサオキシドヘプタモリブデン酸(6-)六アンモニウム:(NH4)6[Mo7O24](1163.80).普通は四水和物.MoO3をアンモニア水に溶解し,1時間煮沸すると得られる.加熱すると,90 ℃ で水を失い,150 ℃ でアンモニアの放出がはじまる.230 ℃ でMoO3 になる.水に可溶.水溶液は弱酸性を示す.[Mo7O24]6- は7個のMoO6が稜共有で結合した構造をもつ.分析などの試薬(リン酸,ヒ酸,鉛などや,アルカロイド用),写真用,陶器のつや出し,顔料,触媒などの原料などに用いられる.[CAS 12027-67-7]【Ⅲ】ヘキサコサオキシドオクタモリブデン酸(4-)四アンモニウム:(NH4)4Mo8O26.七モリブデン酸アンモニウムの酸性水溶液(pH 3~5)から得られる.[CAS 12411-64-2]【Ⅳ】ヘプタオキソ二モリブデン酸(2-)アンモニウム:(NH4)4Mo2O7(339.959).モリブデン酸塩の熱アンモニア水溶液から析出する.これらアンモニウム塩は,いずれも稜共有のMoO6八面体型の長鎖構造をもつ.七モリブデン酸塩と二モリブデン酸塩は水溶性のモリブデン原料として,おもに触媒の製造に用いられる.アンモニウム塩はすべて塩化ビニルなどプラスチックの遅燃剤として利用される.[CAS 27546-07-2]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報