リンタングステン酸塩(読み)りんタングステンさんえん(その他表記)phosphotungstate
phosphowolframate

改訂新版 世界大百科事典 「リンタングステン酸塩」の意味・わかりやすい解説

リン(燐)タングステン酸塩 (りんタングステンさんえん)
phosphotungstate
phosphowolframate

リンタングステンとからつくられるヘテロポリ酸の塩の俗称。正しくはタングストリン酸塩(ウォルフラマトリン酸塩)という。MI3[PW12O40],MI7[PW11O39],MI6[P2W21O71],MI6[P2W18O62]などがある。

一般式MI3[PW12O40]。リン酸アルカリと過剰のタングステン酸アルカリの混合水溶液に強酸を加えると得られる。[PW12O403⁻はリンを中心原子としてそれにポリ酸が配位した多核錯体で,リンモリブデン酸塩の[PMo12O403⁻と同じ構造である。ドデカタングストリン酸H3[PW12O40]は水溶液から通常30水和物の無色立方晶として得られる。50℃の水溶液からは24水和物で菱面体晶。硝酸を加えて得られる21水和物は斜方晶系柱状晶。融点90℃。アンモニウム塩(NH43[PW12O40]・4H2O,カリウム塩K3[PW12O40]・4H2O,ナトリウム塩Na3[PW12O40]・15H2Oなどはいずれも無色晶。

一般式MI6[P2W18O62]。たとえばタングステン酸ナトリウムNa2WO4・2H2Oを熱水に溶かし,これにリン酸を4倍量加えて煮沸してから,濃硝酸を少量加えたのち塩化アンモニウムを加えるとアンモニウム塩が得られる。[P2W18O626⁻の構造は図のような二つのPO4を中心とした多核錯体である。オクタデカタングスト二リン酸H6[P2W18O62]・18H2Oは黄色晶,アンモニウム塩(NH46[P2W18O62]・14H2Oは黄色ないし淡黄緑色三斜晶系晶で水に溶ける。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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