改訂新版 世界大百科事典 「ワタアカキバガ」の意味・わかりやすい解説
ワタアカキバガ (綿赤牙蛾)
Pectinophora gossypiella
鱗翅目キバガ科の昆虫。翅の開張1.5cm内外。翅は細長く,前翅外縁は傾斜しており,後翅頂はややとがりぎみ。前翅は赤みをおびた褐色で,不規則な暗色紋がある。原産地はインドと推定されるが,世界中のワタ作地に広がり,最悪の害虫となってしまった。幼虫はワタアカミムシとも呼ばれ,ワタのつぼみ,花,蒴果(さくか)内の種子を食べるため,被害がきわめて大きい。条件がよければ1ヵ月で1世代を完了するが,低温,乾燥,食餌欠乏などの悪条件下では幼虫は休眠する。老熟幼虫で越冬し,翌年改めて繭をつくって春に蛹化(ようか)し,次いで成虫が羽化するが,極端な乾燥の下で2年以上も幼虫状態ですごした例も知られている。日本でのガの出現は春から夏の終りころとなる。ワタ以外には,オクラ,タチアオイ,ハイビスカスなど,アオイ科に寄生する。最近では,日本での綿花栽培が盛んでないことから,この害虫もあまり重要視されてはいない。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報