改訂新版 世界大百科事典 「ワタフキカイガラムシ」の意味・わかりやすい解説
ワタフキカイガラムシ
cottony cushion scale
Icerya purchasi
半翅目ワタフキカイガラムシ科の昆虫。イセリヤカイガラムシともいう。雌成虫は広楕円形で体長4~6mm,胸部背面は隆起する。全体暗橙赤色(煉瓦色)で不規則な黒斑があり,粉状の蠟質物を装う。成熟すると腹面に白色綿状の蠟質物で体長の2~3倍に及ぶ大きな卵囊を形成して産卵する。きわめて多食性でナンテン,トベラやかんきつ類などのほか300種以上の植物を吸汁,加害し,しばしば群生してすす病を誘発,大害をもたらす。発生経過は不規則で年間を通じ各発育段階のものが見られる。原産地はオーストラリア。現在,ほとんど全世界の熱帯から温帯地方にかけて広く分布する。日本には明治の末ころかんきつの苗木に付着して侵入,関東以西のかんきつ園で猛威をふるった。その後原産地から天敵のベダリアテントウを導入して増殖,放飼が行われ,かんきつ園での制圧に成功した。しかし今でも,ときに都市公園などで多発を見ることがある。
執筆者:河合 省三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報